「銀色の電車」が当たり前になった真の理由 色にこだわる関西はステンレス敬遠?
一方、関西の私鉄の中でもステンレス車を積極的に採用してきたのが南海電鉄だ。同社は全国的に見てもステンレス電車をいち早く投入した鉄道の一つで、1962年にデビューした4扉の通勤電車6000系は、アメリカ・バッド社のライセンスを受けて東急車輌が製造した、日本で3番目のオールステンレス車だ。同時期に製造された鋼鉄製の7000系は老朽化で引退したものの、6000系は50年以上経った今も現役で走っており、いかにステンレス製の電車が長持ちするかという証のような車両である。
山陽電鉄も海辺を多く走行するためステンレス・アルミ製電車の採用には熱心で、1960年にステンレス製、1962年にアルミ製の2000系電車を導入。その後はアルミ製が主流となっている。
その山陽電鉄と相互乗り入れを行う阪神電鉄は、昭和30年代に試験的に数両のステンレス車を導入したものの、その後長らくステンレス車両を採用しなかった。だが、阪神・淡路大震災後の1996年、震災で廃車になった車両の補充としてデビューした9000系は久し振りのステンレス製となり、その後近鉄奈良線への乗り入れ用に導入された1000系や、最新型の5700系など、新たに導入される車両の多くがステンレス製となっている。
民鉄各社とまた異なるのが地下鉄だ。省エネ化が重視された地下鉄は、全国各地の路線で早い時期から車体を軽くできるステンレス製やアルミ製の車両を採用した。ステンレス車両が主力なのは名古屋市営地下鉄、大阪市営地下鉄、福岡市営地下鉄だ。東京メトロ(旧営団地下鉄)は初期はステンレス製を採用したが、現在では全てアルミ製の車両に統一された。都営地下鉄は三田線や新宿線が全てステンレス製車両で、浅草線と大江戸線はアルミ製車両となっている。
ステンレス車両のメリットとは?
では、なぜこれほどステンレス製車両が増えたのだろうか。さまざまな理由があるが、ステンレス製は鋼鉄製より強度を高めつつ車体を軽くできるため、省エネルギー化を図ることができるのがひとつだ。さらにもうひとつは、塗装しなくても錆びることがないほか、汚れも目立ちにくい点だ。
錆びにくさは車両が長持ちすることにもつながる。日本初のオールステンレス車両である東急の7000系は東急から引退した後も、青森県の弘南鉄道などで第二の人生を送っているほか、国内2番目のオールステンレス車である京王井の頭線の3000系も各地で現役であることから、その耐久性がわかる。
軽量でエネルギー消費を抑えることができ、錆びにくく長持ちし、さらに塗装しなくても美しい外観を維持できる。鉄道会社にとってステンレス製車両は、汎用性が高く、”儲かりやすい”車両なのだ。
今回は主な大手私鉄や地下鉄などを取り上げたが、取り上げられなかった車両も数多くあり、ファンの叱咤は免れないと思う。いずれJRや、地方民鉄のステンレス車両も紹介する機会があればと思っている。
(写真は全て筆者撮影)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら