「銀色の電車」が当たり前になった真の理由 色にこだわる関西はステンレス敬遠?
今では当たり前になったステンレス製車両だが、長らく鉄道業界をリードしてきたのは東急電鉄と東急車輌だった。日本初のオールステンレス車両であり、現在に至るステンレス車の礎といえる7000系以降、東急車輌は7200系、8000系、8500系など東急電鉄向けはもちろん、国内各鉄道に数多くのステンレス製電車を輩出し、ステンレス車両の有力メーカーとなった。
名車といわれた7000系は東横線の急行電車や地下鉄日比谷線乗り入れ用などで使われたが、同時期の地下鉄日比谷線には角張ったデザインの7000系とは対照的な、丸みを帯びたデザインのセミステンレス車両である営団地下鉄3000系が走っており、ステンレス車両同士の相互乗り入れとなった。
今では首都圏の大手私鉄全社でステンレス製電車が走っているが、東急以外で全車がステンレス車両なのは京王電鉄だ。京王は1962年に登場した井の頭線の3000系を皮切りにステンレス車を導入。名車といわれた3000系はすでに京王からは引退したが、群馬県の上毛電鉄、愛媛県の伊予鉄道など各地の地方私鉄で今も活躍している。
逆に、最近までステンレス車両がなかったのは赤い電車で知られる京浜急行だ。2002年から導入されている新1000形は、当初は赤く塗装したアルミ製車体だったが、2007年以降に登場した車両はステンレス製となり、側面の一部が銀色の「赤くない」京急電車が生まれることになった。だが、今年増備された車両はステンレス製でも赤と白のラッピングを施し、銀色の部分はほとんど見えなくなっている。
ステンレス車が1両もない鉄道は?
首都圏の電車はステンレス製が大半となる一方、西日本の私鉄ではステンレス車両を採用する会社が一部に偏っている傾向がある。個人的な見解ながら、これは関西の私鉄各社が「色の美」を競っているからかもしれない。
電車の色を重視する阪急電鉄、京阪電鉄には、ステンレス製電車は1両も見当たらない。阪急も近年の車両はアルミ製車体となっているが、無塗装の銀色にはせず、伝統の茶色い「マルーン」カラーにこだわりつづけている。
関西ではないが、名古屋鉄道(名鉄)も色へのこだわりを見せていた。名鉄は真っ赤なスカーレットカラーの電車で親しまれていたため、銀色のステンレス製電車は長らく採用していなかった。だが、2002年に名古屋市営地下鉄上飯田線との乗り入れ用として登場した300系は名鉄初のステンレス製車体となり、その後の新車は銀色のステンレス車体に赤いラインを巻いた装いで登場している。
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