糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(上)
――私はまだ「東洋経済オンライン」を始めて7カ月くらいなのですが、糸井さんは「ほぼ日」を15年続けられていて、もう神様みたいに見えるんですけど。
ハハハハ。
――「今日のダーリン」は毎日、糸井さんが書かれているわけですが、テーマやネタが枯渇しませんか。
枯渇はしない。だって、見つかるまで探すから。
なんかあるもんですよ。爪の先、見てても「爪の先」というテーマで書けるからさ。でも、15年はやっぱりキツいです(笑)。
――すごいなと思います。あらゆる仕事をしている方にとって、楽しく働き続けるために大事なことはなんでしょうか。
「楽しくやろう」って自分に言い聞かせることじゃないですか。
ぼく、「楽しめ」という言葉を最初に明確に聞いたのは、矢沢永吉なんです。彼が大きいステージの直前に、「誰だってビビる。オレだって同じだ」って言ったんです。スポットライトを浴びて客席が「ワーッ!」って言ってるけど、こっちからは客席が真っ暗で見えない。こいつらと一人で対峙しなきゃならないのは、誰だって恐ろしいって言うわけです。だけど、あるときから「楽しめ」って自分で言うようにしたって。
ぼくはそのおまじないを、ずいぶん使わせてもらっています。大きな仕事とかを前にして、「これはすげえぞ!」と身震いしたときなんかは、「永吉、楽しめ!」と。「オレは永吉じゃないけど」って(笑)。
そういうふうに自分に言って聞かせないと、やっぱり忘れます。「そうはいっても、つらいなあ」ってなってしまうので「楽しめ」と考えるクセをつける。
――上司も部下も、すべての人がそれを習慣化すればいいですね。
うん。たとえば、上司に怒られているときに、「これって理不尽だなあ」と思っても、一方で「それを楽しめ」っていう声が自分の中から聞えてきたら、ちょっとつらさが違ってきますよね。
ただ、「そんなのできないよ」という自分もいますから、その都度、自分と問答していくことが大事じゃないかなあ。「なんで楽しめないのだろう」「いや、そもそも楽しむ必要ないじゃないか」とか。そういうさまざまな自己問答を繰り返す。
あとは、やっぱり打席を多くして、アウトプットの分量を増やすことが、楽しく働くコツでしょうね。「どうすればいいかなあ」って毎日、机の前に座っているだけの人は、一瞬の楽しさも得られないですよ。
その意味でも、仕事場はあったほうがいい。仕事場というか、自分のやるべき仕事。あてがいぶちでもなんでも、あったほうがいい。なければ自分で探す。
(構成:上田真緒、撮影:今井康一)
※ 続きはこちら:「ブラック企業が生まれる理由」
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