糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(上)
――「楽しいからこそ、仕事はできる」というメッセージが印象的でした。「楽しい」を展覧会のあちこちで強調されていますが、やはりそれがいちばん大事なキーワードですか。
みんな「楽しくないから、おカネがもらえるんだ」って催眠術にかかってる気がするんです。「苦しい分だけ、ギャランティーされる」と思い込んでいませんか?
――「給料は我慢料だ」という言葉もありますね。
でも、つらいだけじゃなくて、喜びがあるからやっているんです。たとえば、昨日の小笠原のホームラン。どれだけつらかったか!
でも、彼はヒーローインタビューで「思い出しました!!」って言ったんです。「こんなにうれしいことなのか」ってことでしょう。
注)6月5日、巨人対日本ハム戦で、巨人・小笠原道大内野手が2年ぶりのホームランを放ち、サヨナラ3ランとなった。お立ち台に上がった時の第一声が「思い出しました!!」だった。
そういう楽しさを軸にして「働く」ことを考えたいなというのが、やっぱり大きいテーマですねえ。
ぼくは、もともと働くのがイヤだと思ってる人間なんです。この展覧会全体がそこからスタートしてまして(笑)。
注)展覧会入口にある年表の最初の項目は「1960年前後のある夜」。そこに「小学生の糸井重里、将来、はたらく日のことを不安に思い、布団の中で泣く」と書かれている。
――それが、展覧会の真ん中あたりには、「学校よりも社会のほうが自由だった」と書かれています。ほんと、そうですよね。
うん。
――糸井さんは、社会に出てからはずっと楽しくてしょうがないですか。働くのがつらいと思われることはあるのでしょうか。
いや、いつもつらいですよ。
――えっ、つらいんですか。
「つらい」時間と「楽しい」時間と、どっちが多いかっていったら、単純に足し算をしたら、たぶん「つらい」です。でも、どっち側から見るかですよね。「楽しい」側があるから、「つらい」時間もただの「つらい」じゃなくなる。