糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(上)

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――「楽しいからこそ、仕事はできる」というメッセージが印象的でした。「楽しい」を展覧会のあちこちで強調されていますが、やはりそれがいちばん大事なキーワードですか。

糸井重里(いとい・しげさと)
東京糸井重里事務所社長
1948年生まれ。 コピーライター、エッセイスト、タレントなどとしてマルチな才能を発揮してきた。98年ウェブメディアの、「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設。東京糸井重里事務所は、売上高28億円、純利益3億円の優良企業。著書に「はたらきたい。」などがある。

みんな「楽しくないから、おカネがもらえるんだ」って催眠術にかかってる気がするんです。「苦しい分だけ、ギャランティーされる」と思い込んでいませんか?

――「給料は我慢料だ」という言葉もありますね。

でも、つらいだけじゃなくて、喜びがあるからやっているんです。たとえば、昨日の小笠原のホームラン。どれだけつらかったか!

でも、彼はヒーローインタビューで「思い出しました!!」って言ったんです。「こんなにうれしいことなのか」ってことでしょう。

注)6月5日、巨人対日本ハム戦で、巨人・小笠原道大内野手が2年ぶりのホームランを放ち、サヨナラ3ランとなった。お立ち台に上がった時の第一声が「思い出しました!!」だった。

そういう楽しさを軸にして「働く」ことを考えたいなというのが、やっぱり大きいテーマですねえ。

ぼくは、もともと働くのがイヤだと思ってる人間なんです。この展覧会全体がそこからスタートしてまして(笑)。

注)展覧会入口にある年表の最初の項目は「1960年前後のある夜」。そこに「小学生の糸井重里、将来、はたらく日のことを不安に思い、布団の中で泣く」と書かれている。

――それが、展覧会の真ん中あたりには、「学校よりも社会のほうが自由だった」と書かれています。ほんと、そうですよね。

うん。

――糸井さんは、社会に出てからはずっと楽しくてしょうがないですか。働くのがつらいと思われることはあるのでしょうか。

いや、いつもつらいですよ。

――えっ、つらいんですか。

「つらい」時間と「楽しい」時間と、どっちが多いかっていったら、単純に足し算をしたら、たぶん「つらい」です。でも、どっち側から見るかですよね。「楽しい」側があるから、「つらい」時間もただの「つらい」じゃなくなる。

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