貧困若年層は、老人と同じく税金で支援せよ 「働かせる」では解決不可能な時代に突入した
ところが、実際の若者に対する支援は、先に述べたように、いかに働かせるか、いかに労働市場に統合していくのかという文脈で語られることが大半である。そして、支援関係者などもあたかもそれが重要であるかのように施策を運用し、若者に向かい合っていく。
あくまで働かせることを目標にしている
具体的には、就労支援や労働市場へのアクセス支援を行い、納税者として養成するプログラムを進める。地域若者サポートステーションやニート・引きこもり対策などの目的もおおむね、就労に向けた準備や支援である。
雇用の劣化や労働市場の変容という社会構造の変化があるにもかかわらず、あくまで働かせることを目標にしている的外れな処置がなされている。そこでは社会保障や社会福祉の充実を求め、若者の生活のしにくさを軽減することはあまり重視されていない。
それに加えて、若者支援において決定的に言えるのは、社会資源の不足である。職業訓練や資格取得のメニュー不足は顕著であり、貧困から抜け出したり、再就職に有利なメニューが提供されていない。だから失業しても再就職が容易ではなく、職業訓練内容も脆弱だから、産業間の労働者の移動も起きにくい。つまり、若者支援に必要なメニューに魅力や実効性が欠けているのである。
たとえば、都市部の要介護高齢者であれば、ヘルパー、デイサービス、デイケア、ショートステイ、緊急通報システム、訪問看護、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど、各地域で機能しているか否かは別として、社会資源は豊富にある。これらと比較しても、若者支援のメニューは専門家でも思いつかないほど未整備である。若者の自立を阻む社会システムの不備を指摘しなければ、解決策には行き着かない。困った際に助けてくれる機関や利用できる資源が少なく、若者は簡単に困ることができないでいる。
さらに若者支援施策に足りないのは、給付である。さまざまな支援施策が必要であることは間違いないが、最も重要なことは、所得再分配を強化して生活をしやすくすることだ。非正規雇用であれ、どのような働き方であれ、最低限の暮らしを保障しなければならない。
家賃や教育費の高さ、特別な暮らしをしていなくても、日常生活における支出の多さは若者から自由な暮らしを剥奪していると考えるべきだ。東京都内で一生懸命に働く非正規雇用の若者がひとり暮らしを続けることができるか否かを考えてもらえば、その不可能さ、困難さが見えてくるだろう。一般的なアパートを借りるだけでも、家賃は相当な負担を覚悟しなければならない。
家賃補助制度や教育費の補助など、若者への給付策が講じられなければならないと強く思っている。これらの給付策なき支援は若者支援としては不十分だろう。わたしたちが求めなければならないのは、支援策の充実とともに、給付策の充実である。そう強く主張しておきたい。
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