信用収縮に悩む準大手・中規模企業 金融引き締め強化と過剰な“反社”警戒が混乱助長
冴えない株価が続く不動産関連企業の苦悩
ここ数年で急成長を遂げ、連結売上高は約1800億円に達する東証1部上場の大手新興デベロッパーのアーバンコーポレイション。連結有利子負債は約3500億円で、借入金はメイン格のみずほを主体に単体でも約1300億円。今年1月に唐突に発行した312億円の海外CB(公募は550億円)についても、市場関係者の間ではさまざまな憶測を呼んでいる。
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東証1部の中堅マンションデベロッパーのアゼルは、メインの横浜、りそなが大株主で、社長、副社長も両行の出身者で占められている。同社は3月中旬、08年3月期決算を当初の黒字予想から、棚卸し資産の評価減による特別損失の計上によって約33億円の最終赤字への転落を発表している。借入金は約350億円と前期比約60億円増加。急きょ、全社員の4分の1にあたる希望退職者の募集に踏み切った。
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08年1月中間決算で、連結売上高で約200億円、経常利益で約44億円という大幅な下方修正を余儀なくされたマザーズのアルデプロ。不動産投資ファンド向けの物件販売で稼いできたが、ファンドの資金調達環境の悪化によって販売が激減し営業拠点統廃合などリストラを強いられている。借入金はりそな、三菱東京UFJ、東日本、八千代、関西アーバンなどから約240億円に上る。
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名証セントレックス上場のエスグラントコーポレーションは、ワンルームマンション販売、不動産流動化事業で急成長。07年6月期の売上高は、前期比倍増の約365億円を上げている。連結有利子負債は約200億円。「資金繰りがタイト化しているのでは」(不動産関係者)との見方が浮上していたが、ユニマットグループを引受先とした18億円の第三者割当増資を発表し、一息ついたもようだ。
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不動産ファンドの身売り情報も頻発している。体力の乏しい中小ファンドの淘汰は必至であり、すでに後発の中小ファンドでは大手に身売り話を持ち込んでいるケースもある。大手・中堅クラスでも、ジャスダック上場の投資・不動産ファンドが、業績悪化から東証1部の不動産ファンドに身売りを打診、一方で某上場不動産ファンドの大手外資への身売り交渉は破談になっている。
失速が鮮明になってきた大手新興ベンチャーも、財務リスクが膨らんでいる。コムスンの介護報酬の不正受給、労働者派遣法違反による事業停止によって窮地に追い込まれたグッドウィル・グループは、2000億円規模の借入金のうちメインバンクのみずほが約900億円の貸出債権を米国サーベラスへ売却、事実上の身売りを強いられている。行政処分を受けた日雇い派遣大手のフルキャストは、07年8月期決算で初の最終赤字へ転落。インテリジェンスの子会社化などによって07年2月中間期で黒字転換を果たしたUSENも、目玉事業の無料動画配信サービス「Gyao」の採算性はなかなか改善せず、ここ1年余りはピーク時に2000億円に達していた有利子負債の返済に追われてきた。楽天も、信販の楽天KCや楽天証券などの金融事業は明らかに減速、これに膨大な借入金が重くのしかかる。