「中等部から慶應」の27歳女子に「幼稚舎」の壁 東京カレンダー「慶應内格差」<2>
これまでいろんな職業の男と付き合った。開業医やミュージシャン、広告代理店営業マン。どれも長くは続かず、全て栞から別れた。
最後の彼は、プロ野球選手。稼ぎはいいし、野球に直向きな姿は尊敬できる。だけど、会話に知性が感じられないし、浮気の心配もある。結婚は絶対無理!3Sはおろか、両親にも決して会わせられない……。もう遊びは終わりにしないと。経済力。知性。家柄。とにかく遺伝子が良さそうな人。
栞の頭に、ある1人が浮かんだ。
「……圭一郎!」
すぐさま3SにLINEをなげる。
ー私、やっぱり圭一郎がいい。ー
すると沙羅。
ー確かに。結婚相手としては大あり!ー
フラれたのは人生で一度きり
圭一郎は慶應の同級生。高校時代に麻布十番祭りで早希子に紹介され知り合った。
幼稚舎生。16年間を慶應で過ごす、まさしく純粋培養。二物も三物も与えられた真の慶應生たち。何でもある環境に育ったからこそ、彼等はすごく純粋だ。人を羨むことも妬むこともない。
実家は9割方港区もしくは世田谷区。高級車を数台所有し、デートやゴルフ、場面によって乗る車をチェンジ。頻出スポットは、けやき坂スタバ。車をヒルズの駐車場に停め、ラフな服装で登場。24時、アバクロの似合う男性を見つけたら要注意。
あくまで家業があるので、仕事はノリ。とりあえず毎日が楽しければ。女性には一銭も出させない、それが彼らのモットー。
圭一郎もまた幼稚舎生らしい屈託のないまっすぐな性格の持ち主。栞は自分にはないものを感じ、学生時代にずっと片思いしていた。
栞から告白もしたが、まさか、と本気にしてくれなかった。
フラれたのは人生で一度きり。圭一郎だけだ。卒業と同時に連絡もしなくなり、いまはSNSで投稿を見るのみ。
プロ野球選手の彼とは別れたが、変わらず目の前のめぼしい相手とのお食事会に行く毎日を送っていた。今日の相手は弁護士。優良物件だが、独特の上から目線がちょっと……。