「中等部から慶應」の27歳女子に「幼稚舎」の壁 東京カレンダー「慶應内格差」<2>

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「圭ちゃん、遅れてごめんね〜」

白いツイードのスーツ、エルメスのスカーフを巻いた黒のバーキン。55歳とは思えない美しさ。輝く肌に、くるんと上がったまつげ、丁寧に手入れがされたネイル。まさに美魔女!

お父様はダブルの紺のスーツ。栞は親友の幼稚舎生、早希子の親を思い出す。いつ行っても高級なお菓子が出てくるあの松濤の家……。同じ匂いだ!

ご両親は2人とも幼稚舎出身

「こんばんは、栞さん。圭一郎からよく聞いています」

緊張で栞は、笑顔で頷くことしか出来なかった。まあ、座って、という圭一郎に似た穏やかな父親の誘導のもと、席に着く。

「それで、栞さんはどこから慶應なの?」

圭一郎の父方は代々続く海運業。母方は田園調布の地主。紹介で結婚したというご両親は2人とも幼稚舎出身で生粋の慶應一家だった。

彼等にとって、慶應生なのは至極当然。「どこから慶應」なのかがキモなのだ。

「中等部からです」

「小学校は?」

「地元の公立にいきました」

「あら……」

そう言い、運ばれて来たシャンパンを飲む。お母様の反応に、栞はこの面接に落ちた、と確信した。

食事会が終わったあと、圭一郎は母からこう言われた。

「圭ちゃんにはやっぱり早希子ちゃんみたいな同級生の子がぴったりよね。常に三歩後ろをついてくるような、お淑やかな女の子を探してもらわなくちゃ」

レストランや人脈、社会人になってからというもの、常に3Sの中でも自分がリードしているという自負のあった栞。人気アナウンサーになり欲しいものは全て得てきた。唯一、幼稚舎出身という経歴以外は。

初めての感覚だった。

何でも共有される3SのLINE。でもこの気持ちだけは自分の胸に閉まった。幼稚舎と中等部、同じ内部生でもそこには決して超えることのできない高い壁がある。

早希子にあって私にないもの……。栞は見事に玉砕した。

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