同じ慶應卒でも「外部生」は永久に格下扱いだ 東京カレンダー「慶應内格差」<1>

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「お店の場所少し分かりにくいんだよね〜」

そう言いながら、スマホを頼りにお店を探す彼。

「もう少し行き慣れてるところにすればいいのに」

不器用さは学生時代から変わってないなと思いながらも、変わらない彼が可愛く思えた。

会話は主にお互いの近況報告に。

「仕事は帰り遅いけど、ようやく後輩もできて余裕ができた感じかな。今週初めての海外出張でシンガポール行ったんだよ。観光もできたし、クライアントと食べた中華も美味しくて最高だった。」

目をキラキラさせ楽しそうに話す彼。

シンガポールには沙羅の会社のアジア拠点があるため年に4回以上は出張する。ちょうど夏に行ってきたところだった。

「シンガポール、わたしも大好きなの!チャーターボックスっていうお店のチキンライスが美味しいんだよね! 今回マンダリンに泊まったなら食べたんじゃない?」

「ふ〜ん、そうなんだ。ご飯は全て上司に任せてたから、全然知らないんだよね。」

原田くんに感じた違和感

海外旅行やレストランの話は、内部生の仲間となら必ず盛り上がる鉄板ネタ。ネットで評判の人気店だけでなく、旅行好きの友人や赴任している現地の友人たちにオススメも聞いてお店を選ぶのが沙羅にとっては当たり前だった。

いつもの友達に話すそんなつもりで沙羅は話題を振ったが、彼は興味が無さそうだった。

一方、大学時代から沙羅のことが気になっていた原田は、なんとか次につなげたいと言う一心で、少ない引き出しからレストランの話を引っ張り出していた。「『レストラン エール』って知ってる? 去年オープンしたお店で俺ずっとここ気になってるんだけど、フレンチだから行きづらくて。よかったら今度行かない?」

……去年遊んでいた会社の先輩と行ったお店だ……。しかし、笑顔で返事をした。

「へ〜知らなかった! うん! 行ってみたい!」

噛み合わない会話を切り上げたくて、とにかく彼に同調してやり過ごし、22時まで粘って、結局自分から帰りを切り出した。

次ページ自分とは違う、合わないんだ…
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