任天堂、ポケモンGO効果を円高が「帳消し」に 上期は赤字転落、新型機とマリオに復活託す

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だが、それを上回る影響を残したのが円高だ。今年に入って急速に進んだ円高により、任天堂は399億円もの為替差損を計上。ポケモンGO効果を打ち消し、赤字幅拡大につながった。それでも最終黒字になったのはメジャーリーグ球団、シアトルマリナーズを運営する会社の株式を一部売却したことで627億円の特別利益が加算されたからだ。

これらの結果を受け、任天堂は通期の業績予想を修正。5000億円だった売上高予想を4700億円、450億円だった営業利益予想を300億円に下方修正した。一方で純利益については従来の350億円という予想から500億円に引き上げている。

スイッチとマリオで巻き返せるか

ニンテンドースイッチは据え置き機と携帯機の融合で勝負する(C)2016 Nintendo

実は任天堂にとって、勝負はここからが正念場だ。同社が上期赤字にもかかわらず、下期に大幅な黒字化を見込んでいるのは、2016年末から期末である2017年3月にかけて事業の浮沈を担う商品が続々登場するからだ。中でも重要なのが冒頭のスイッチと「スーパーマリオラン」だ。

スイッチとは、任天堂が開発を進めていた新型ゲーム機だ。従来は「NX」と呼ばれていたが、10月20日に紹介動画が公開され、そこで正式名称も発表された。

君島社長の言うとおり、スイッチは従来のゲーム機にない独特の形態をとっている。左右で分割された着脱式コントローラーとディスプレーの付いた本体、そして本体を収納するドックの3つで主に構成されている。

動画では、本体の左右にコントローラーを取り付けて通常の携帯ゲーム機のように遊ぶほか、コントローラーを取り外しての遠隔操作、さらに左右のコントローラーの片割れを2人が持って対戦、ドッグに装着してテレビで画面でのプレイなど、さまざまな用途が提案されていた。携帯ゲーム機と据え置き機という2つの用途を両立しているのが特徴となる。

今回の発表で、君島社長は「3月の発売から年度内に200万台の出荷を予定している」と説明。さらに、売れば売るほど赤字になる「逆ザヤ」を行わないことも改めて明言した。これを低迷する業績回復の起爆剤とする構えだ。

気になるのは任天堂以外のソフトメーカーがどれだけのソフトを供給するか。WiiUはその独特の操作性から、十分なソフトが集まらなかったと言われている。これについて君島社長は「動画を見て興味を示す企業あり、その点では手応えはある。何よりも自社ソフトで魅力を届けること。それによって他社も安心して付いてくることができる」と言う。

スイッチと同時に重要となるのがスマホゲーム。ここでも任天堂は切り札を着る。9月7日に行われた米アップルが行った新製品発表会で、「iPhone7」の発表とともにサプライズ発表されたのがスマホ向けゲーム「マリオラン」。今年12月に配信予定で、DeNAと共同開発の「ファイアーエムブレム」「どうぶつの森」もマリオランの配信後に順次配信される。

君島社長は「モバイル向けを事業の柱にしていくと同時に、従来のビジネスに対する好影響も期待できる。ポケモンGOの後、ゲームソフトの「ポケモン」や携帯ゲーム機の販売が伸びた。マリオランによって、任天堂のゲームは面白いと思ってもらえれば、スイッチにもつながっていくだろう」とスマホ向けゲームの展望を話した。

昨年急逝した故岩田聡が「スイッチ」と「モバイル向けゲーム」のコンセプトを語ったのは2015年の3月のこと。岩田氏の思いをどのような形で花開かせるか。まさにこの後半戦が任天堂の勝負所と言えそうだ。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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