ピジョン、少子化ニッポンで健闘する秘訣 山下茂社長に聞く

拡大
縮小

――ピジョン製品が対象とする年齢層を、従来の24カ月(2歳以下の乳幼児向け)から広げていけば、製品群をさらに広げられるのでは?

もちろん追求していきたいですが、一方で慎重に見極めなければならないテーマでもあります。対象年齢を上げれば、これまでピジョンが培ってきた基礎研究の核を少し外れ、競争相手も従来と微妙に異なってきます。単純に売り上げを増やすために、年齢層を広げるという戦略は得策ではないと考えています。

それよりもまず、いまあるベビー用品でもっと国内外のシェアを上げていけるはずです。そこでしっかり利益を上げた上で、自分たちのリソースをうまく活用でき、自分たちのブランドが薄まらないのであれば、少しずつ進めていきたいです。

――ピジョンの成長エンジンはもはや中国をはじめとする海外に移っていますが、国内事業をどう位置づけていますか。

海外で好業績を出している一方で、国内は横ばい程度を保つのが精いっぱいです。とはいえ、本拠地でしっかりといい製品を出して、売り上げを作っていくのが、ブランド構築の基本となることには違いありません。

各製品のデザインや使い勝手の良さなどは、需要に合わせて海外の拠点で、スピード感を持って開発していくことが必要だと考えています。ただ、コアとなる技術は、これからも日本で開発していきます。新しい技術を盛り込んだ商品は、まず日本で売る。日本で売れたものが、やっぱり世界でも売れます。

ヘルスケア・介護も付加価値がカギ

――今後はヘルスケア・介護分野の開拓も課題ですね。

ここは正直、苦労しています。収支もまだトントンくらい。この分野もベビー用品同様、他社にない付加価値を付けなければ売れないと思っています。国内のドラッグストア向けの販売ルートだけでは大手にかなわないので、現在は介護施設向けを重点的に開拓しているところです。

ただ施設向けの専業メーカーもあるので、この販路も決して簡単にシェアが取れるわけではない。そこで当社では、販売の際の情報・サービス提供でうまく差別化できないかと考えています。

(2004年に買収した)タヒラ社が長年介護用品を手掛けており、この蓄積を生かした製品を出していくのは大前提で、それに加えて現場でより使いやすくなるような提案が出来ればと思います。そのために営業マンへの教育方法も見直しているところです。

(撮影:梅谷 秀司)

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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