民進党の「年金カット法案批判」は見当違いだ 将来世代の給付底上げへ、冷静に議論すべき

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現状が続けば将来世代の給付はさらに低下

なぜマクロ経済スライド未発動の際、現高齢世代の所得代替率は横ばいではなく、上昇してしまうのか。その理由は現行の年金額改定ルールにある。日本経済の賃金デフレが続く中で、これまで名目賃金上昇率が物価上昇率を下回る年が多かった。そのとき、年金額を低いほうの賃金ではなく、物価に合わせるなどして改定していたため、所得代替率が上昇してしまったのだ。

今後もこうした傾向が続くなら、現高齢世代の給付水準は上昇し、将来世代の給付がさらに低下していくことになる。これを避けるために、マクロ経済スライドとともに、年金額改定ルールの変更にも動いたわけだ。

民進党はそもそもこうした公的年金制度の仕組みを理解できないまま、批判を繰り返した可能性がある。それを示すのが「若い世代も、新ルールで年金が減る」とした資料。これは民進党の井坂信彦議員が衆院予算委員会での追及で使ったパネルボードだ。ここには、今回のルール改定により、現高齢世代だけでなく、将来世代の給付も減ると明記されている。

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