民進党の「年金カット法案批判」は見当違いだ 将来世代の給付底上げへ、冷静に議論すべき

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厚生労働省は民進党の要求に応えて10月17日、試算結果を公表した。それによると、仮に今回の年金額改定ルール変更を過去10年間に適用した場合、現高齢世代の年金給付は今より3%減る一方、将来世代の給付水準はルール変更なしの場合に比べ、7%程度上昇するという結果になった(実際のルール変更は2021年4月)。

民進党は「政争の具」にしている

これに対し、民進党や社民党は「国民をだますようなやり方は許されない」と逆に一段と反発を強めた。過去10年はデフレ時代だったのに対し、将来世代の給付水準を試算する経済前提が楽観的だからだというのがその理由だ。しかし、実際には厚労省の試算は同一の経済前提の上で、年金額改定ルールを変更した場合と変更しなかった場合の差を示したのであり、経済前提の違いはあまり試算に影響しない。

このような中で、長妻昭元厚生労働大臣に至っては「今すぐ"抜本改革"に取り組む必要がある」と主張し始めており、完全にかつての民主党に先祖返りしつつある。

世界最速の少子高齢化が進む中、現在の公的年金制度は年金財政の均衡を優先し、将来の給付水準を後回しにしている。それだけに将来世代の年金給付をいかに底上げするかが喫緊の課題であり、今回の改定ルール変更はその中の一つに位置づけられる。「政争の具」とするのではなく、冷静な議論が求められる。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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