JAL、ANAも身構える“中東の翼” エミレーツ航空が羽田-ドバイ便を就航

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東京都内で会見するエミレーツ航空のティエリー・アンティノリ パッセンジャー・セールス・ワールドワイド執行副社長

なぜ、割安料金と豪華サービスを両立できるのか。「ビジネスとして、とても成り立つ価格ではない。国家戦略として、燃油を安く調達できるなどのサポートがあるのではともささやかれ、実態が不透明だ」。ある国内大手航空会社の幹部はそう警戒する。当のエミレーツ側は「燃料はほかの航空会社と同じ価格で購入している」(アンティノリ副社長)と否定する。

エミレーツは欧州エアバス社の2階建ての超大型旅客機「A380」を90機も大量発注するなど、近年積極投資を敢行。1度に大量の旅客を運べる大型機は、1座席当たりの燃料費が少なく済み、しかも最新型機のため燃費性能も高い。座席を埋めることができれば輸送効率が高く、その分値下げの余地が生じる。いわば、薄利多売のビジネスモデルだ。

カタール、エティハド航空を入れた「ガルフ3社」が台頭

急成長しているのはエミレーツだけではない。カタール航空、エティハド航空を含めた中東のエアライン勢は「ガルフ3社」と呼ばれ、今や世界中のエアラインから恐れられる存在だ。ANAホールディングスの伊東信一郎社長も、「海外エアラインのトップと話すと、中東キャリアーにどう対抗するかは必ず話題になる」と言う。

6月3日、スペイン・FCバルセロナの本拠地カンプ・ノウスタジアムで入団会見に臨んだ、ブラジルの若きスーパースター、ネイマール。5万人超のサポーターの前に姿を現したそのユニフォームの胸に刻まれていたのは、「QATAR AIRWAYS(カタール航空)」の文字だった。

FCバルセロナはアルゼンチン代表のリオネル・メッシらを擁する世界最高のサッカークラブ。その胸部分に商業広告が入るのは、110年以上の歴史の中で初めてのことだ。

バルセロナだけではない。英アーセナルや伊ACミラン、仏パリ・サンジェルマンなどのビッグクラブのユニフォームには「エミレーツ航空」の名が、英マンチェスター・シティFCのユニフォームには、エティハド航空の名が入る。中東のエアラインは資本力にものを言わせ、欧州のビッグクラブの顔の部分を占拠するまでになっている。

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