自動運転技術、米テスラの危うい独自路線 全車種に完全自動運転装置を搭載するが・・・
[デトロイト/サンフランシスコ 20日 ロイター] - 自動運転車用の重要技術を巡って米テスラ・モーターズ<TSLA.O>は独自路線を歩み、他のメーカーと張り合うことになりそうだ。ただ業界関係者の間からはテスラの判断を危ぶむ声も聞かれる。
テスラはこのほど全車種に完全自動運転装置を搭載する方針を決めた。しかし周辺情報を正確に把握するセンサーシステムはカメラとレーダーで構成し、レーザー光を使ったレーダー(ライダー)は組み込まない計画。一方、ライバル勢の多くはライダーを採用する方針を打ち出している。
テスラは自動運転用ソフトウエアの分野でも、イスラエルのモービルアイ<MBLY.N>のシステム「オートパイロット」の採用を打ち切った。5月にオートパイロットを装着した「モデルS」が事故を起こし、オートパイロットの安全性についてテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とモービルアイが対立したのが背景。
モービルアイは自動車メーカーや部品供給業者二十数社にシステムを納入しており、ドイツのBMW<BMWG.DE>、米部品メーカーのデルファイ・オートモーティブ<DLPH.N>、半導体大手インテル<INTC.O>などと自動運転車システムの開発で提携している。
テスラとモービルアイの対立で得をしたのは半導体のエヌビディア<NVDA.O>で、同社はテスラの新システム向けに半導体を供給する。
テスラを含めて、完全な自動運転車の販売に踏み切ったメーカーは今のところ皆無。ただ、ほとんどのメーカーやサプライヤーはカメラやレーダー、ライダーなどさまざまな技術に熱心に取り組んでいる。
グーグルの自動運転車システムはライダーとレーダー、カメラをいずれも採用している。複数のセンサーを組み合わせることで、個々のセンサーの能力の限界を補えるという。
例えばカメラは暗闇や、逆に極めて明るい状況では十分に作動しない。雪やひょうもカメラの視界を悪化させる。ライダーは360度の範囲を感知できるが、霧や雨、雪の環境では感度が低下する。
ライダーは現在の価格が8000ドル程度と高いことが普及の障害になっている。しかし価格は急速に低下しており、今後数年で25─100ドルに下がると予想されている。
フォード・モーター<F.N>はライダーを製造するベロダインに投資しているが、配車サービス向けの自動運転車の市場投入は2021年以降で、一般向けの販売は25年以降としている。
トヨタ自動車<7203.T>の見通しでも、完全自動運転車の販売は10年から15年先になる。
デルファイ、ロバート・ボッシュ[ROBG.UL]、コンチネンタル<CONG.DE>、バレオ<VLOF.PA>など主要な自動車部品メーカーはいずれもライダーを組み込んだ自動運転システムの開発を進めている。
ベロダインのマルタ・ホール社長は、テスラはライダーなしにはあらゆる状況に対応するシステムを構築できないと指摘。UBSのアナリストのコリン・ランガン氏も、ライダーの採用見送りで自動運転システムのコストは下がるかもしれないが、ライダーが致命的な事故を防ぐことができることが証明された場合には、テスラに向けられる目は厳しくなるだろうと予想した。
(Paul Lienert記者、Alexandria Sage記者)
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