キリンが「クラフトビール」に食らいつく理由 ニューヨーク発ビールは若者の心をつかむか

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一方で「大手がやることではない」とクラフトビールに否定的なのが、アサヒビールやサッポロビールなどのライバルメーカーだ。従来のビールの高価格帯を強化することで、新たな需要の喚起に腐心している。

2016年に入ってから、アサヒは主力の「スーパードライ」の高価格派生品である「ドライプレミアム」をリニューアル。サッポロも看板商品「ヱビス」の味とデザインを刷新した。サントリーは10月25日からセブン&アイグループの店舗限定で、高価格帯の主力「ザ・プレミアム・モルツ」の派生品を発売する。

キリンは高価格帯が手薄

ブルックリン社製ビールを運ぶトラック。ニューヨークのあちらこちらで見掛ける

キリンも47都道府県ごとに異なる「一番搾り」を発売するなど、従来の主力ビールのテコ入れに取り組んでいるが、高価格帯では確固たるブランドを持っていなかった。今後、高価格帯の展開はクラフトビールに懸けるというわけだ。

現時点で、日本のクラフトビール市場はビール類全体の1%に満たない(販売数量ベース)。キリンの目標は2021年までに市場規模を3%に拡大し、その中で同社が50%のシェアを握ることだ。一方でブルックリン社のある米国は、クラフトビールが市場全体の12%超を占める。

クラフトビール市場の拡大を牽引し、ビール離れを食い止めたい――。そんなキリンの戦略は功を奏するのか。ブルックリン社との提携で加速させ、米国の背中を追いかける。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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