多くの恋愛では、過去を断ち切らないと新しいスタートを切ることはできない。亮平さんとは別の話だが、不倫をしている人から「いい人がいたら不倫相手とは別れて結婚したい。でも、すてきな独身者と出会えない」と愚痴を聞くことがある。既婚者が不倫相手の独身者に優しいのは当たり前なので、不倫をしながら「もっといい人」を探すのは難しい。
本当に新しい出会いを求めるのであれば、「好きだけど、自分とはちゃんと向き合ってくれない人」は根本的に不誠実なのだと見極めなければならない。亮平さんのかつての片想い相手も同じだ。10年間も思わせぶりなんて残酷すぎる。他人の大事な30代をなんだと思っているのか。
つい興奮してしまった。43歳の時、亮平さんにチャンスが訪れる。再び辞令が下り、名古屋の中心部での勤務となったのだ。今度の出向先は残業がほとんどなく、有給休暇も取得しやすい。
「前の職場に比べると、時間的な余裕ができました。実家からもすぐのところに職場があり、動きやすい。婚活をするには最後のチャンスだ、と思いました」
亮平さんは大手結婚相談所に入会する一方で、母親の「友達の友達」であるプロのお見合いおばさんの手も借りることにした。合わせて15人ほどの女性とお見合いをしたが、よい結果はなかなか出なかった。
亮平さんは「30代前半までの女性がいい」などと男性にありがちな条件を提示していたわけではない。どちらかと言えば、亮平さんがお断りをされてしまうことが多かったのだ。
「とにかく話しまくる」スイッチがオンに
「私は初対面の人にはしゃべりすぎてしまうんです。正直すぎるのでしょうか。家族の問題などもすべて明かしてしまいます。相手に考えて話す時間も与えていないと自覚しています。でも、つい話し過ぎる。相手が引いているなとわかっていても、どんどんしゃべってしまうんです」
亮平さんと会食をしていて、筆者も同じことを感じていた。亮平さんには会話における「間」がないのだ。たくさん話してくれるのはありがたいけれど、こちらにも考えたり別の質問をする時間をもらえないと疲れてしまう。これがお見合いやデートであれば、「この人は自分のことばかり夢中で話しているけど、私のことは見えているのだろうか」と不安になるだろう。
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