「喋りすぎて」結婚できない男に訪れた良縁 「家族同士が惹かれ合う」という運命もある

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結婚してからも綾子さんにはぎこちなさが残っていた。ささいなことで言い争いになってしまう。あるとき、綾子さんは亮平さんに気持ちをぶつけた。

「両親がいないから私と結婚したんでしょう!」

綾子さんは天涯孤独の身であることを負い目に感じていたのだ。それに対して、亮平さんも本音を返した。

「何をバカなことを言っているんだ。お姉さんの妹だから結婚したんだよ!」

亮平さんと綾子さんはそれぞれの実姉を尊敬している。その姉同士が仲がよかったこと。家族を大切にする亮平さんにとっては何よりの結婚理由だったのだ。このケンカ以来、綾子さんは急に穏やかになった。

母も姉も、妻を元からの家族のように思う

「母も姉も、妻をもともとの家族のように思っています。自分たちが母親と姉の代わりをするのだそうです。私も妻に、亡くなったご両親とお姉さんもひっくるめて家族なんだと伝えるようにしています。最近、お母さんやお姉さん、飼っていた犬の思い出を少しずつ話してくれるようになりました。お父さんの話はほとんど出て来ませんけど(笑)」

結婚して2年目には不妊治療を受け、すぐに男の子に恵まれた。亮平さんの提案で、綾子さんの旧姓の漢字を一部使った命名をした。わが子に、綾子さんの家族の血が流れていることを忘れないでほしいからだ。

「信心深い妻は、毎日欠かさずにご先祖様の供養をしています。その姿を見て育っている息子は、まだ2歳なのに仏壇と神棚に自ら手を合わせるんですよ。このまま成長してくれたら嬉しいです。うちの家族も先祖を大事にして来たので、特に母が喜んでいます。本当にいい人と結婚できました。ご縁に感謝しています」

肉親との付き合いや距離感は個人によって大きな差がある時代だ。早くに両親と姉を亡くした綾子さんは、家族と先祖との絆を一人きりで守り続けていた。そこに強く共感して結ばれた亮平さんの家族との関係は極めてよい。個人が惹かれ合うだけでなく、家族が求め合うような結婚もあるのだ。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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