インターネットについても、前政権時代からの対策では不十分と考えた習近平は、取り締まりを強化。そこで流される言説を政府のふるいにかけ、無責任あるいは事実でないと当局が判断する投稿を許さず、それでも問題のあるサイトは強制的に閉鎖した。政府の方針に背いたとして逮捕された者の数は1年間で数十人に上ったという見方もある。
もちろん、インターネットを完全に統制することは困難だ。取り締まりを強化すれば、それなりに効果は上がるが、取り締まりをかいくぐり、別の場所や別の方法で同じことを繰り返す者が現れる。モグラたたきのようなものだが、政府はそれでも手を緩めず、その大元から規制することを試み、米グーグルなど外国の検索エンジンに対しても、半ば強制的に統制強化に協力することを求めた。サイトの閉鎖は今でも日常的に行われている。
中央の宣伝部を頂点とする従来からの言論統制のあり方にも不満だったらしい。2014年2月、「中央インターネット安全・情報化指導小組(中央網絡安全・信息化領導小組)」を成立させ、自らその長となった。「インターネット安全」といいながら、インターネットの対策全般を監督する新機構である。宣伝部のさらに上に位置付けられている。
ちなみに、習近平は「○○小組」なる組織を多数成立させ、すべて自らが長(主任)となっている。既存の政府機構が満足に動かないから、強力な新機構を作るのだ。2015年7月には「国家安全法」を成立。これは、スパイ行為などを始め広範な反中国的言動を取り締まるもので、インターネットについても一条(第25条)設けている。
香港のメディアでは編集幹部が解雇
さらには香港のメディアにも、統制強化を及ぼした。2015年10月、香港の「銅鑼灣書店」の店長や店員ら5人が習近平に批判的な書籍を販売したという理由で拉致され、数カ月間、中国内にとどめ置かれた。
やはり香港の『明報』は、中国情勢に関する報道でトップクラスだが、「パナマ文書」の特集を組んだ編集幹部の姜国元が2016年4月、突然解雇された。パナマ文書は習近平の親族が租税回避にかかわっていたことを暴露したからであり、圧力がかかって明報社としても解雇せざるを得なくなったのだと言われている。
このように言論統制の強化が進む中で、いくつかの新聞・雑誌は自由な報道を重視する姿勢を見せたが、結局すべてつぶされた。
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