F1ドライバー養成の特別講座に挑戦してみた プロサイクリストの別府史之氏が体験

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シミュレーターをあとにすると、次の目的地は、MTC内にあるフィットネス&ウェルネスセンター。ドライバーパフォーマンスマネージャーのサイモン・レイノルズと、パフォーマンスサイエンティストのデヴィッド・ハーヴェイが別府の1日インストラクターとなる。職業柄なのか別府と握手を交わすなりサイクリストの体型を上下に目でチェックした二人。バトンをそのままカーボンコピーしたかのような体躯に舌を巻いた様子だ。痩身ながら必要な筋肉を過不足なく備える別府は、レーシングドライバーに理想的な体型だという。「レーシングドライバーはサラブレッドのように勝つことだけを目的に鍛え上げられるのです」とハーヴェイ。

F1ドライバーに転身する日も近い!?

“サイクリングとレースには様々な共通点があります。 カラダに無理な姿勢を強いる持久力のスポーツなのです”

トレーニングに入る前に、まずは別府の心拍変動を5分間測定。結果はというと……「多少のストレス状態にある」とのこと。予想外の診断に少しばかり動揺した別府に向かって、1度のテストでは正確なコンディションは把握できないとフォローするハーヴェイ。ハーヴェイは、レースウィークエンドを通して繰り返し所属ドライバーの測定を行い、パフォーマンスやストレスレベルに影響を及ぼす要因を検証する。得られた結果をもとに、就寝パターン、トレーニングプログラム、摂取する食品や栄養などを調整して、ドライバーのベストパフォーマンスを引き出す。

続いては、レイノルズの監督のもと、待ちに待ったトレーニング本番だ!「レース中終始コクピットに座っているのでF1がとてもタフなスポーツであることを、視聴者の多くは理解していません」とレイノルズ。「F1のフィジカルトレーニングは他の競技と大きく異なります。体幹を強靭にし、常に安定した姿勢を保つトレーニングが重要です。また心臓血管の強さや持久力も大切ですね。長時間にわたって極限に近い暑さ、ストレス、Gフォースに対処しなければなりません」。

マクラーレンのトレーニング設備は、テクノジム社がカスタムメイドしたもの。そのひとつは、アイソメトリックトレーニング(筋肉の収縮がない状態で負荷をかける)用に開発されたもので、コーナーリング時のGフォースを再現するためヘルメットの側面にハーネスでウエイトをとりつける仕組みになっている。「頭、首、肩の強化が不可欠なのです」とレイノルズが説明する。理想的な体幹を有していることを誇示するかのように、レイノルズが指示するトレーニング術を次々とこなす別府。2本のロールの上で背中に木製の棒を乗せ、そのままの状態から片手片足でバランスを保ってポーズを取るというアクロバティックなリクエストにも軽々と応じてみせた。文字通り“あっぱれ”な表情のレイノルズは「首、肩、腕を鍛えたら、すぐにでもF1レーサーになれますよ(笑)」とお墨付きを与えた。

この日の締めくくりはエアロバイク。別府にとって“ホーム”ともいえる自転車のサドルに座りながら1日を振り返った。「常に極限の状況下でトレーニングするF1はとてもユニークなスポーツですね。でもサイクリングと一緒でチームスポーツでもあり、素晴らしいスタッフが周りにいてこそ、素晴らしい結果が生まれるのだということを改めて実感しました」。

(写真: Malcolm Griffiths、文: Alicia Kirby)

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