グーグルが実践する「大企業病」を防ぐ秘訣 同社人事を担い続けて17年の古参幹部が語る
――そうしたコンセプトはどのように社内で実現しているのか。
たとえば「イノベーションはどこからでも出てくる」というのは、よいアイデアは誰からでも、いつでも、どこにいても出てくるということ。創業初期のころは建物のあちらこちらにある休憩スペースに「アイデアボード」と呼ぶ大きなホワイトボードを置いていた。冗談やバカげた思いつきから、真剣なものまで、あらゆる社員が自分の考えを貼り付けた。
「自分たちのEメールサービスが欲しい」というアイデアからは「Gメール」が生まれたし、「バスが必要」という書き込みからは、(多くの社員が住む)サンフランシスコからグーグル本社までのシャトルバスが実現した。今では毎日100以上のバスが運行され、インターネットも使える。
社員同士のコラボレーションを促す
――ちょっとしたことが大きな変化をもたらすと。
その通り。そのために社員同士のコミュニケーションも重要だ。開放的なオフィスにはあちらこちらに休憩できるスペースや小さなキッチンがあり、カフェテリアでは1日中食事を提供しているが、そもそもの目的は普段は仕事でかかわらない社員同士で話してもらうことだ。
営業や財務、エンジニアといったばらばらの職種の人が話し、アイデアを出し合い、コラボレーションにつなげてほしい。
「20%の自由時間を与えよ」というのも、目的は同じ。(自分の業務ではなくても)社内で取り組んでみたいものがあれば、違う職種、違う国での仕事を手助けできる。また、「G to Gクラス」というグーグル社員同士が教え合う学習コースもある。そのようにして社員が人間関係を築き、新しいアイデアを考え、次世代のグーグルについて考えることを期待している。
――新しいことへの挑戦には、失敗も伴う。安心して取り組める環境をどう作っているのか。
9つの柱のうち「賢く失敗せよ」というのは非常に重要だ。要は皆にリスクを取ってほしいということ。そうでなければクレイジーで新しいアイデアは生まれてこない。たとえば(自動運転プロジェクトなどを手掛ける)グループ会社の「X(旧・グーグルX)」では、CEOのアストロ・テラーが「失敗したがよく練られていたグッドアイデア」に対する賞を設けている。
新しいことを試すのに安全な環境であることは、とても重要だ。創業者たちだって失敗している。以前、組織をよりフラットにするため、400人いたエンジニア部門からマネジャー職を廃止することになった。われわれは反対したが、当時CEOだったエリック・シュミットが賛成したので実施されることになった。ただそれは4か月でとん挫し、結局マネジャー職を復活させた。とんでもない混乱に陥ったからだ。このように失敗することもあれば、うまくいくこともある。
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