上昇した実質金利の低位安定化が急務

水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く(下)

日銀の国債買い切りオペの効果を期待して国債を買って翌週には損を出すという状況が続くと、金融機関のリスク許容度が下がり、国債相場の復元力も弱くなってくる。国債の発行体である財務省、日銀のオペ先である民間金融機関、日銀の関係がうまく回らなくなってくる。

――長期金利が高止まりすることのリスクをどう見ていますか。また、日銀には管理可能なのでしょうか。

長期金利の急騰は、日銀が最も避けなければならないことである。政府高官や黒田総裁から、「株高上昇や経済・物価の先行き見通しの改善を受けて長期金利が上昇するのは自然」という発言が目立ち、長期金利を押し上げる要因になっている。株価は実体経済の改善を上回るペースで上昇しており、長期金利上昇を容認する発言は不用意だと思う。

今後、政府は構造改革や財政再建のフェーズに移っていかなければならない。その際、長期金利が低位安定していることが最も重要になる。長期金利が低位安定していれば、構造改革も財政再建に取り組む時間的余裕が持てる。また、成長戦略に伴う財政支出も低い調達コストで可能である。

しかし、長期金利が上昇して利払いが雪だるま式に膨らみ始めたら、財政政策の自由度は大幅に制約される。日本は、230%程度という世界最大の政府債務残高の名目GDP比を抱えている。量的・質的金融緩和が採用される前まで、財務省の適切な国債管理政策と日銀の時間軸政策によって長期金利が安定していたが、これは貴重なインフラだった。

非伝統的金融政策は常時見直す姿勢が必要

白川前総裁は金融政策の打ち出し方が「小出し」と批判される一方、「やれることは全部やった」とする黒田総裁を評価する論調が少なくない。しかし、非伝統的政策は過去に経験知がないので、経済動向や市場の反応を見ながら見直していく必要がある。

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