損保ジャパンが買収する「英保険王」の正体 6400億円のM&Aで出遅れからの挽回を狙う

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今回の買収でSOMPOは最大の米国市場に念願だった基盤を獲得できる。グループ全体に占める海外保険の利益割合も12%から27%に引き上げ、東京海上(今期43%見通し)、MS&AD(同27%)を追撃する。株価は公表から2日で約1割も上昇した。

櫻田社長が会見で「優秀な経営陣を加え、事業の変革を目指す」と語ったように、狙いの一つは2013年からエンデュランスのCEOを務めるジョン・シャーマン氏の獲得にある。

海外事業の持ち株会社を設立へ

シャーマン氏は英ロイズ出身で40年を超えるキャリアを誇り、自ら創業した会社を大きく育てるなどやり手で知られる。「英保険市場の王」との異名もあり、エンデュランスでも、積極的な買収戦略や専門人材採用で拡大路線の旗を振ってきた。

SOMPOは2020年代の早期に修正連結利益3000億円という目標を掲げる。2018年度の利益は2200億円以上に積み上がる見込みだが、世界10位水準になるにはまだ足りない。

櫻田社長は「さらなるM&Aも否定しない」としており、シャーマン氏にM&Aを含めて腕を振るわせる腹積もりだろう。そのために金融業界では初となる、海外事業を統括する持ち株会社の構想まで披瀝した。「CEOはシャーマン氏にやってもらいたい」(櫻田社長)。

格付け会社フィッチ・レーティングス・ジャパンの森永輝樹ダイレクターによると「キャノピアスとは円滑に買収後の統合作業を進めていた」。ただ、新興のエンデュランスと老舗のキャノピアスとでは企業文化も異なる。

相次ぐ巨額買収の先に大きなシナジーを生み出せるか。業界3位のSOMPOが躍進するためのカギとなる。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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