「若者の貧困」に大人はあまりに無理解すぎる 仕事や家族に頼れる時代は、終わりを迎えた

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若者たちが働いても「しんどい」状況は、大人たちによって「つくられた」ものだった?(写真:AH86 / PIXTA)
生活困窮者支援を行うソーシャルワーカーである筆者は、若者たちの支援活動を行っていると、決まって言われることがある。「どうしてまだ若いのに働けないのか?」「なぜそのような状態になってしまうのか?」「怠けているだけではないのか?」「支援を行うことで、本人の甘えを助長してしまうのではないか?」などである。
要するに、"若者への支援は本当に必要なのか?"という疑念だ。これは若者たちの置かれている現状の厳しさが、いまだに多くの人々の間で共有されていないことを端的に表している。今回の連載を通して、「若者なんだから、努力すれば報われる」という主張など、ナンセンスであることを明らかにしていきたい。

もはや通用しない労働万能説

若者は働けば自立できる、働きさえすればまともな生活ができるという神話(労働万能説)が根強く存在している。働けばそれに見合った賃金を得られ、その賃金によってまっとうな生活を営めるというものだ。

賃金を得るために、若者はどのような職場に入るか、どのようなキャリアを積むかで悩まなくてはならない。また、安定した仕事に就くように要請する社会的な圧力にも悩まされる。そのため、就職活動で人気があるのは、やはり一部上場企業であり、公務員志望の学生も増えている。

しかし当然ながら、上場企業へ入社できたり、公務員になれる人数はもともと決まっている。すべての人がまともな賃金を得られる職業を確保することも、現実では不可能である。

事実、働いてもまともな賃金が得られる保証がない職種も増えている。そして、その仕事はたいてい非正規雇用で、終身雇用ではないため、不安定な就労形態をとっている。賞与や福利厚生がない職場も多く、働いたからといって、生活が豊かにならないことが現在の労働市場で起こっているのだ。いわゆる「ワーキングプア問題」が注目されるようになってきた。働いても貧困が温存されてしまうのである。

これは何も本人が低学歴であったり、コミュニケーション能力が低いということに由来しているわけではない。大学を卒業しても、普通に働いて生計を維持することが急速に困難になっているのだ。

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