「IoT」でビッグデータとAIは絶対に必要か データをむやみに集めても「IoT」には無意味

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実はこれまでPOSレジのデータを分析してみたことは何度もあるのです。飲食店のビッグデータを分析して分かったことは、ひとことで例えれば「焼酎の“鏡月”を頼んだ客よりも、“ふんわり鏡月”を頼んだ客のほうが、客単価が高い」ということでした。

つまり、スタンダードな焼酎よりも、プレミア感がある焼酎を頼んだ客のほうがたくさん飲み食いしてくれた、ということですが、それを飲食店に伝えても「何を当たり前のことを!」と言われるのは目に見えています。

実際にこんな経験もしました。POSレジには「経度緯度計のセンサー」も入っているので、その店がある場所の、天気や気温が分かります。そこで飲食店に、「どんな天気でどんな気温だった時にどういう注文が増えるかが分かりますよ」と売り込んだのですが、「そんなことはだいたいわかっている」と、あまり興味を示してもらえませんでした。

「仮説」を検証するには「スモールデータ」で十分 

つまり何が言いたいのかというと、ビッグデータを分析して出てくる答えは、すでにビジネスの現場にいる人たちが経験則として知っているものであることが少なくないのです。

IoTをビジネスに取り入れようとしている人は、「大量のデータを集めなければ」とか「データは多ければ多いほどいい」と思い込んでいる人が多いように感じます。

もちろん、天気や気温、湿度、曜日や時間帯といったデータと、飲食店でのお客さんの注文データとをクロスさせて分析したら、誰も気づいていない大発見があるかもしれません。また、データサイエンティストなどの分析のプロがしっかりと分析することで、価値のある結論にたどり着きやすくなるでしょう。そういうアプローチの仕方もあると思いますが、IoTが活躍するのは、そういう分野だけではないと思うのです。

同じように飲食店を例にとるなら、「コース料理にこのメニューを組み込むと、女性客の予約が増えるんじゃないか?」と、お店側で“なんとなく感じている仮説”のようなものがあると思います。

だったら、少しの期間だけコース料理のメニューを組み替えてみて、その間の予約状況や注文状況を分析してみる。このように、“なんとなく感じている仮説“を検証するほうが、業務の現場では価値が高いことがあります。そしてそれを可能にするのは、実はビッグデータではなく、スモールデータで十分なのです。

次ページ人工知能も万能ではない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事