日本板硝子、英ピルキントンの貢献まだ先 買収から7年、欧州リストラは最終章へ

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会社側は業績急浮上の根拠として、次の3つのポイントを挙げる。

(1)前期実施したリストラ効果が100億円見込まれること、(2)今期の追加リストラ費用として従来想定よりも20億円少ない90億円を計画していること、(3)円安効果で売上高が約900億円、営業利益では約30億円がかさ上げされること(東洋経済の推計額。会社想定の為替レートは1ドル=100円、1ユーロ=130円)。

だが、実際のところは計画どおりに運ばずに、営業黒字化は難しくなりそうだ。日本板硝子では、買収子会社であるピルキントン社の展開する欧州事業が、全社売り上げの4割を占める。その欧州市況の見通しは、クレメンス・ミラー副社長兼COOによれば、「modest(あまりよくない)」。

ピルキントン社の欧州各国の拠点では、人員削減や余剰生産設備について「すでに2割の削減を行った」(ミラー副社長)。ところが、ライバルのサンゴバン(仏)や旭硝子などを含めた供給体制の過剰感は解消されておらず、価格面での引き締め効果は期待したほどではないもようだ。

つまり、日本板硝子にとって、ピルキントンがカバーする欧州事業の今期収益見通しは、円安効果については期待できるものの、競争激化で売価修正は困難のままであり、粗利益の改善が見込みづらい。

さらに、計画には織り込んでいない追加リストラ策が実施される公算が大きく、その費用計上があると、前期と同じように営業利益にはマイナスに響く。

これは、日本板硝子が、IFRS(国際会計基準)を完全適用しているため。リストラ関連の費用(国内基準ではリストラ特損や減損特損に相当する費用。前期実績は192億円)が、営業利益の段階で「個別開示項目」として織り込まれる。

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