なめるな危険!「電気自動車レース」の超魅力 日本のメーカーが参加しないのは大問題だ

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まず参戦している10チーム、20人のドライバーが4人ずつ5チームに分かれ予選を戦う。予選タイムでグリッド(スタート・ポジション)が決まり、決勝は45分間。容量制限によって途中で電池切れになるため、ピットにフル充電したスペアカーが控えており、ドライバーは頃合いを見計らって2台目に乗り換える。

面白いのは、車の性能にあまり差がないことだ。最初のシーズンは全チームがルノー製の同じ車で戦った。今シーズンからモーター、ギアボックスなどの独自開発が解禁されたが、電池は6シーズン目まで同じものを使う。

差が出ないようにしてレースを盛り上げたい主催者のねらい通り、予選は大混戦。20台のうち12台までが1周を1分3秒台で走った。ポールポジションを獲得したのは中国製EVを駆るネルソン・ピケJr.(ネクストEV・ニオ)である。

今期初参戦の我らがパナソニック・ジャガーは14位と16位。出遅れたが1周の差は1秒程度。本番では何が起こるかわからない。

本戦は序盤から接触、リタイアが続出する荒れ模様。優勝候補筆頭とされたグラッシ(アプト・シェフラー・アウディー・スポート)も接触でノーズが吹き飛び、ピットインを余儀なくされる。終盤で先頭に躍り出たのは昨シーズン・チャンピオンのブエミ(ルノー・e.ダムス)。グラッシが猛然と追い上げるが、最後はブエミが逃げ切った。アンドレッティは5位、6位と健闘したが、パナソニック・ジャガーは12位に沈んだ。初参戦のパナソニック・ジャガーは完走しただけで上出来とも言える。完走で得たデータは次戦で大いに役に立つからだ。

クアルコム!

決勝は45分と短いが、展開が目まぐるしく変わるので目が離せない。ハラハラドキドキ感は十分で、むしろテレビ放映を考えれば丁度いい長さといえるかもしれない。何より、いつもは普通の車が普通のスピードで走っている公道をド派手なレースカーが疾走する様は、なかなかスペクタクルである。

レース以外で驚いたのは米クアルコムがメインスポンサーに名を連ねていることだ。クアルコムといえばスマートフォン向けのチップで圧倒的なシェアを誇る半導体メーカーだ。「なぜクアルコムがFEに」と思って調べたら、同社はEV向けの無線充電装置を開発していた。いちいちプラグを差し込まなくても、その場所に停めておけば勝手に充電してくれる装置である。

東京でもフォーミュラEやりませんか?

香港グランプリで登場したセイフティー・カー(市販車)はすでにクアルコム製の無線充電装置を使っていた。EVが普及すれば、ショッピングセンターや駐車場などあちこちに、無線充電スポットができるだろう。未来はすぐそこまで来ているのだ。

FEの開幕戦が開かれた10月9日、日本の鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)ではF1日本グランプリが開かれた。シニア記者もかつては、爆音を立てて走るF1に熱狂したものだが、FEを見てしまった今となっては、二酸化炭素を撒き散らすガソリン車のレースが時代遅れに見えてしまう。

そこで突然だが、小池百合子東京都知事にご提案申し上げたい。

東京でフォーミュラEをやりませんか。最先端のEVがレインボーブリッジを抜け、すったもんだが続く豊洲市場を駆け抜ければ、東京のイメージが一新されること、請け合いですぞ。クールビズで世相を変えた小池知事にこそ、ふさわしいイベントだと思いますが、いかがですかな。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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