政府の危険な拡張財政に手を貸す日銀 財政政策のしもべになった金融政策

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量的緩和は、実体経済に影響しない

マクロ経済学では、「金融市場」というストックの市場と「実物財市場」というフローの市場を考える。

伝統的な金融政策は、マネーストックの調整を通じて、金利を操作しようとする。国内金利が変化すれば内外金利差も変化するから、為替レートも変わる。これらの変化が、実物財市場における設備投資や輸出に影響することを狙うのである(なお、両市場の関係は一方的ではない。実物財市場で決まる所得が貨幣需要に影響を与える。こうして、両者の相互関係から均衡が決まる)。

しかし、日本では、2000年代初めに金利が非常に低い水準にまで落ち込んでしまい、伝統的な金融政策では経済を動かせなくなった。そこで採用されたのが、「量的緩和政策」である。これは、金利ではなく、マネタリーベースあるいはマネーストックそのものの操作を目標とする政策だ。

では量的緩和政策は、どのような経路を通じて経済に影響を与えられるのか? これについての理論的な根拠は、実ははっきりしなかった。

第一に考えられるのは、貨幣数量説だ。これは、(マネーストック)×(流通速度)=(物価水準)×(取引量)という関係である。マネーストックが増えれば、物価水準の上昇か取引量の増加(あるいは両方)が起きるというものだ。しかし、実際にはそうはならなかった。流通速度が低下してしまったのである。いまでは、貨幣数量説に依拠して量的緩和措置を支持しようとする人はいないだろう。

そこで第二に考えられたのは、「期待」だ。日銀の説明では、期待の変化で長期金利が下がるとされた。すなわち、日銀が購入するのは残存期間が短い国債だが、この政策を継続すると宣言すれば、長期金利も下がるというのである。実際、イールドカーブ(金利の期間構造を示す曲線)は平たん化した。これが「時間軸効果」である。

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