日米の「心地よい相場」は終幕を迎えつつある 金融政策に市場が反応を示さなくなってきた

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日銀は「金融緩和強化」という言葉を入れることによって、「国債買い入れを続けつつ、10年国債利回りを『概ね0%』で推移させる」という政策が両立可能な「金融緩和策」であるかのような「お化粧」を施している。だが、日銀が国債購入を続けながら、マイナス利回りで推移する10年国債利回りを「概ね0%」まで引き上げるというのは、現実的に不可能に近い政策である。

もし、マネタリーベースを増やそうとして国債を購入すれば、マイナス利回りが拡大し、「概ね0%」で推移させる目標を達成することは出来ない。

一方、10年国債利回りを「概ね0%」で推移させるという目標を達成しようとすれば、現状では国債を売却しマネタリーベースを減らさなければならない。

日米とも「理想的な状況の終幕」は近い

日銀は新政策によって、「金利」と「量的緩和」の両方を可能にする別の意味での「ゴールディロック的な政策を実施しているような印象を、市場に与えようとしているのではないか。だが、現実のオペレーションが始まることによって、そうした政策でないことが早くも露呈し始めている。

筆者が言いたいのは、日米の金融政策に対する市場の感応度が落ちてきており、それは市場が「ゴールディロック」的状況の終幕が近いことを認識していることを意味する、ということだ。市場の根底には「FRBの利上げ」「日銀の実質引き締め」が流れていることを示すものだ。

「利上げ」という自ら「ゴールディロック」状態を終わらせる選択肢を持つFRBに対して、日銀は「ゴールディロック」状況が続くことを主張し続けるか、これ以上「異次元の金融緩和」には効果がないことを認めて、政策を解除するしかない。

後者の日銀の方が、より苦しい立場に立たされているのは間違いない。
今後、日銀がどちらを選択しても、生じるものは「市場からの信頼の失墜」だ。「ゴールディロック」な状態から目覚めたとき、厳しい現実に直面するのは日銀だということを意識しておいた方が賢明かもしれない。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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