上昇か低下か、長期金利は大きく振れる 市場動向を読む(債券・金利)

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前者のインセンティブ、すなわち、銀行が債券ポートフォリオを大規模に売却してもよいという水準まで長期金利が低下してゆくケースは、内外ファンダメンタルズの安定推移とFRB(米国連邦準備制度理事会)の政策現状維持が前提となる。

国内では、円安や株価の資産効果で多少経済成長率が高まったとしても、CPI(消費者物価)上昇率2%に向けた道筋は今後1年以内に見えてくるとは思えない。そういった環境下で日銀が淡々と国債買入れを続けてゆくうちに、どこかの時点で金利水準の切り下がりが起きてくる可能性が高い。

一方、後者のインセンティブが強まる場合、すなわち、長期金利に上昇モメンタムが生じて銀行が積極的に日銀に国債を売却してゆこうとするケースは、何らかの形で海外市場からのインパクトが加わる場合ではないか。

FRBの出口戦略への思惑で金利が急上昇も

最も注視すべきは、FRBの出口政策である。2003年にVaRショックが発生した時も、日本国債の市場で投機的な買いが発生していた反動という部分が大きかったとはいえ、そのトリガーとなったのは、FRBの緩和打ち止めと米債金利の底打ちであった。実際、1年後の2004年にFRBは利上げを開始するに至るわけだが、2003~2004年にかけては日本国債も含めて主要国で長期金利は上昇基調となった。

今後、FRBの出口がどの程度現実味を持ってくるかは雇用統計をはじめとする経済指標次第であるが、米国の金融政策に対する思惑が米債金利以上に日本国債の金利の上昇をもたらすというようなことが起こらないとも限らない。

いずれのケースであれ、日本国債の金利が4月4日の金融緩和決定前のような水準(10年物で0.6~0.7%)で2014年末まで安定推移するというシナリオは、現実的にはあまり蓋然性の高いシナリオとは思えない。金利低下であれ金利上昇であれ、現行の金融政策が継続される限り、今後1年半の間、日本国債市場はかなり大きく動く可能性が高いと見ておくべきではないか。

森田 長太郎 オールニッポン・アセットマネジメント執行役員/チーフストラテジスト、ウォールズ&ブリッジ代表

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もりた ちょうたろう / Chotaro Morita

慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券、SMBC日興証券などで30年以上にわたりマクロ経済、金融・財政政策、債券需給などを分析し、2023年10月から現職。グローバル経済、財政政策、金融政策の分析などマクロ的アプローチを行うことに特色がある。機関投資家から高い評価を得ている。著書に『日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略』(東洋経済新報社・共著、2011年)、『国債リスク 金利が上昇するとき』(東洋経済新報社、2014年)。

 

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