上昇か低下か、長期金利は大きく振れる 市場動向を読む(債券・金利)
もう一つ、銀行が国債を日銀に売却するインセンティブとしてあるのは、逆に長期金利に上昇傾向が生じ、債券の評価損発生を恐れて銀行が積極的に日銀に国債を売却する場合である。通常でも、投資家は債券ポートフォリオに評価損が発生し始めれば、債券を売却して評価損の拡大を抑制しようと考える。時として、そういった投資家の行動がスパイラル的な相場の下落を招くことがあり、これは債券でなくともあらゆる市場に共通する事象である。
金利上昇を懸念して国債の売りに殺到するケース
しかし、現在の日本国債の市場に固有の事情として、日銀の巨額な買入れによって市場の流動性が極端に低下しているということがある。何らかの長期金利上昇の材料が生じ、評価損の発生が懸念される状況となってきた時、投資家は流動性の低下した市場では必要な額の債券を売却できない事態に直面する。
市場に代替する受け皿として日銀の国債買入れがあるのだから需給的には中立だとの見方もあるが、日銀の買入れ額以上に投資家が国債を売却しようと考えれば、市場にも一定の売却圧力が加わってくる。市場の流動性が低下している分、売却規模に対する価格感応度は通常よりも高くなるはずであり、長期金利はオーバーシュートして急激に上昇するリスクがある。一つめのインセンティブで銀行が国債を日銀に売却するケースとは正反対に、スパイラル的な金利上昇が生じる可能性があるわけである。
このように考えると、長期金利を安定的に推移させたままで日銀が270兆円までマネタリー・ベースを着々と積み上げていくのは、実際にはかなりのナロー・パスであることが分かる。
外的要因による金利上昇傾向が強まらないままであれば、ある時期に長期金利が大きく低下しないと、日銀が国債買入れ計画を達成することは困難になるかもしれない。逆に、外的要因で金利上昇のモメンタムが強まってくれば、スパイラル的に長期金利が跳ね上がる可能性が否定できない。そのどちらかのケースが、これから2014年末までの間に起こる可能性が高いのではないか。
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