2人ともフォーブス誌が優秀な投資家を選出するミダス・リスト(ギリシャ神話の、手に触れたものを黄金に変える力を持つミダースに由来)に載っているトップキャピタリストですが、必ずしも最初からキャピタリストになることを目指していたわけではありませんでした。このように、技術の専門性や事業経験・起業経験など、深い知識と多様な経験を持つ人材が、VCとして活躍することケースが米国では一般的になってきているのです。
今後、日本でも、ベンチャーキャピタルの増加が望まれるところですが、事業経験を持つ人が金融面での知識を得てキャピタリストになる流れができると良いのでは、と思います。
日米の繋がりによるVCの繁栄を期待
イベント全体をプロデュースしたウィルの伊佐山元代表は、「イベント名のMomentという単語には、“一期一会、特別な日になって欲しい”という想いを込めています。シリコンバレーの前向きでイノベーティブな風に触れ、世界で起きている第4次産業革命の波を感じ、そして、“面白いな”で終わるのではなく、“自分がこの波にどう乗るか”を考えて欲しいのです」と語ります。
カンファレンスでの刺激的な議論は、日本のVCやイノベーションの担い手に、行動のきっかけを提供する良い機会になったと思います。
日本ベンチャーキャピタル協会の仮屋薗聡一会長は「日本の未公開ベンチャー企業資金調達額は1600億円を超え、最近大きく伸びていますが、全米VC協会のDixon Doll元会長には、世界の趨勢から見ればまだまだ足りないと指摘されました。短・中期的には5000億円、長期的には1兆円規模を目指し、さらに投資規模が大きくなる環境をつくろうと気持ちを新たにしました。また、信頼を確立し優れたポートフォリオを持つ米国大手VCであっても、新しいタイプの投資家の台頭を受けて、Innovate or be Disrupted(革新的でなければ破壊される)、と危機感を持って活動していることが印象的で、背筋が伸びる思いがしました」と語ります。
筆者も実際にトップランクの人たちの話を聞くことで、投資環境に差はあるものの、シリコンバレーはまったくの別世界ではなく、このような人たちとのつながりをつくり、架け橋を架けることで、日本のベンチャーエコシステムを向上できると改めて考えました。
米国キャピタリストと日本の大企業幹部との交流レセプションが盛大に開催された後、電車に乗ろうと恵比寿の駅前に戻ると、スマートフォンを見ながら道を探している外国人の若夫婦。よく見るとBessemerのEthan Kurzwell氏で、山手線に乗りたいとのこと。一緒に切符を買ってホームに案内すると、楽しそうに夜の新宿の雑踏を目指して電車に乗り込みました。巨大な資金を動かす一流キャピタリストの顔と日本好きの若者の顔、その姿を、ほほえましく思いました。
日本でも、今回来日したような、人間的な魅力のあふれる一流キャピタリストが多数輩出され、ベンチャーエコシステムが大きく育つことを期待しています。
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