南相馬の内部被曝検査、関心低下との戦い 混迷する福島・住民健康管理の取り組み

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住民の関心低下にはいくつかの理由がある。最大の理由として、内部被曝検査での放射性セシウムの検出率が大幅に下がっていることが挙げられる。

原発事故直後の11年に実施されたWBC検査では、子どもの約半数からセシウムが検出された。だが、その後は検出率が大幅に低下。「現在集計中の12年度下期のデータでは、子どもの99%以上、大人でも95~96%が検出限界以下になっている」(坪倉医師)。 

住民の関心低下に強い危機感を抱く、坪倉正治医師

坪倉医師によれば、「食品の検査体制の確立などにより、汚染された食品が出回らなくなったことが大きい」という。ただ、内部被曝リスクの減少は望ましいことである反面、住民の関心低下という新たな問題も起きている。

現在、福島県での最大の問題は、住民の健康管理に関する取り組みがバラバラに行われたまま、情報の統合的管理や提供がまったく行われていないことだ。

たとえば、小児甲状腺検査は「県民健康管理調査」として福島県立医科大学が主導する形で全県で取り組みが続けられている一方、WBC検査は県の事業または市町村による任意事業にとどまっている。

また、ガンマ線による外部被曝を測定するガラスバッジの配布は市町村任せになっており、当初から実施しなかった自治体もある。加えて、甲状腺検査とWBC検査、ガラスバッジ検査のデータを統合して個々人の健康管理につなげるという発想は県にも市町村にもなく、住民には検証が不十分なまま、情報がバラバラに伝えられている。

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