東電、今年度黒字化へ高いハードル 柏崎刈羽原発の再稼働示せず、会社計画は未定

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東京電力は4月30日、前年度(2013年3月期)決算を発表した。営業利益は2220億円の赤字と、合理化効果などによって前回予想値の2750億円より改善。ただ、純利益は6853億円の赤字となり、前回予想の1200億円の赤字から大幅に悪化した。

これは主に、福島第一原子力発電所の損害賠償見積額を3兆6869億円へ増やした結果、それまでの見積額との差額である1兆1619億円を原子力損害賠償費として特損計上したため。営業損失、経常損失は2期連続、純損失は3期連続となった。

一方、今14年3月期の業績予想については、停止中の柏崎刈羽原発の再稼働計画を示せる状況にないことを理由に、未定とした。会見した広瀬直己社長(=タイトル下写真右=)は「(経常益段階での)3期連続の赤字はありえないので、何としても黒字化を目指す」と繰り返したが、柏崎刈羽の今期中の再稼働のメドは立っておらず、今のままでの黒字化は厳しい状況だ。

「極力値上げしないよう、最大限努力したい」

昨年に続く電気料金再値上げ申請の可能性については、「国内景気のムードがよくなっているときに、冷や水をかけるようなことは避けたい。極力値上げをしないよう最大限努力したい」と述べた。

12年度から10年間の収支見通しをまとめた「総合特別事業計画」では、13年4月から柏崎刈羽原発を順次再稼動させることを前提に置いており、すでに実質的な「破綻」の状態にある。今後、同計画を抜本的に見直す必要があるが、その時期について広瀬社長は「国とも話し合いの機会を持つ必要があるが、柏崎刈羽に対する新規制基準に基づく審査動向が明らかになってくれば、できるだけ早めにお示ししたい」と語った。

今期は、料金値上げがフル寄与するため、販売電力量が節電の影響で1%弱減少しても、売上高は今期より2000億円以上は増える見込み。経営効率化効果も12年実績を見ると、総特のコスト削減計画に比べ1400億円強積み増しており、かなり大きな成果とはいえる。

とはいえ、13年3月期の経常赤字3270億円を今期にすべて埋め合わせるのは容易ではないだろう。3期連続の経常赤字を回避することは、取引銀行との関係上も至上命題。柏崎刈羽の再稼働が前期と同様、まったく見込めないとなれば、黒字化の達成には、さらなる大幅なコスト削減の積み増しが必要となる。広瀬社長は修繕費の繰り延べなども示唆しており、具体的な対策の中身が焦点となる。

(撮影:梅谷 秀司)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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