財政インフレ政策にNOを表明するには?

ついに「パンドラの箱」を開けた日銀

財政インフレ政策にNOを表明するには?

では、以上のようなシナリオを阻止できるだろうか?

原理的に言えば、もちろんできる。予算拡大を認めなければよいのである。国債増発を伴う財政支出増や減税を拒否するのだ。しかし、日本の現実を考えたとき、こうしたチェックが働くか否かについては、悲観的にならざるをえない。

「中央銀行が財源を供給して行う財政拡大」というパンドラの箱は、危険だから開いてはならないとされてきた。ところが今回の措置で、それが開かれてしまったのだ。

私は、日本の財政状況を考えれば、いつかは日銀引き受けに追い込まれるだろうと思っていた。ただし、それはもう少し先のことだと考えていた。しかし、その仕組みが、今回の措置で出来上がってしまったのだ。ここで述べたストーリーが現実化すれば、中央銀行は通貨の番人ではなく、財政資金の供給者になる。それは、中央銀行の死を意味する。その代償はとてつもなく大きい。

ロゴフとラインハートが指摘するように、財政赤字がある限度を超えると、インフレ以外の対応方法はなくなる。日本も、終戦直後に財政インフレを実施した。1946年11月から49年5月までの間に、物価が5.8倍になったのである。この経緯は、本連載の第5回(12月15日号)で述べたとおりだ。今回も財政インフレの道を選べば、結局のところ、ロゴフとラインハートが指摘する歴史法則から逃れられないことになる。

ただし、現代の経済は、重要な点で終戦直後の経済とは異なる。それは、国際的な資本取引が自由になっていることだ。したがって、財政インフレが予想されれば、キャピタルフライト(海外への資本逃避)が起きる。財政インフレだけでは日本は破壊されないだろうが、輸入インフレと円安の悪循環に陥れば、破壊される。生き残れるのは、資産を日本から脱出させた人々だけだ。

財政インフレ政策にNOを表明するには、資産を日本から持ち出すことしかない。「日本を否定しないと生き残れない」というのは、日本人にとって究極の悲劇である。

週刊東洋経済2013年5月11日

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