リベラルアーツカレッジで受ける授業 膨大なリーディングと、活発なディスカッション

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どのクラスの授業にもディスカッション

全体的には少人数ディスカッション形式の授業が中心です。クラスによって形態はまったく違うので、いくつかクラスを紹介します。

一つ目は、「Math: Calculus」という数学の授業です。

このクラスでは、主に微分を扱います。クラスは講義形式ですが、人数が15人程度で先生の質問に生徒が自主的に答えていくことで授業が進みます。

数学は世界共通言語だとよく言われますが、共通の記号を使っていても表し方の違いがあります。たとえば初回の授業で、x=[4,8] とか(∞,8) という記号が出てきて、恥ずかしながら何のことやらよくわかりませんでした(ちなみに前者は4≦x≦8 後者はx<8 のことです)。また、よく知られていることですが、分数の読み方も日本とは逆です。たとえば、3/4は、日本語では「4分の3」ですが、英語では”3 over 4”です。言語、文化の壁は数学の領域にまで侵入するのか……と心が折れました。

このクラスの面白いところは、生徒が数学の根幹部分の質問をするところです。微分でも、「なんで突然放物線の傾きなんて求めなくちゃいけないんですか」といった、適当にはいくらでも答えられますが、まじめに答えようとすると時間がかかる質問を繰り出します。また、生徒は質問するとき空気を読みません。教授が熱く講義をするのを遮って、言いたいことをごりごりと質問します。ただ、教授も慣れているのか、さばくのが非常に上手です。

生徒はほかの生徒の答えに対して質問したりもします。私が教授の質問に答えたときも、「なんでそういう答えになったのか説明して」と、突然、隣の男子生徒に聞かれて、なんてこったと思いながらも適当に答えました。アメリカの大学は教授と生徒双方向の授業と言われますが、教授と生徒だけの関係ではなく、生徒同士のかかわり合いがあるところもアメリカならではだと思いました。

数学を学ぶ意味とは

課題もなかなか面白いです。数学の授業なのに、毎回、数学の定義やら歴史的側面についてのリーディング課題が出ます。宿題に加えて、金曜の授業の後に出されるQuiz(小テスト)の第2問はconcept question(コンセプト問題)といわれ、「なぜその定義が正しいのか」「この定義の逆が成り立たないことを証明せよ」といった問題が出ます。これがなかなか良問で、きちんと定義をわかっていないと解けないようになっています。

さらに数学に関する記事も渡されます。

”What is mathematics for?”という記事はなかなか面白いものでした。この記事は数学なんて仕事と関係ないからやっても意味ないじゃないか、という意見に疑問を投げかけるものでした。とても簡単に要約すると「仕事に役立たないからやる意味がない、と考えるよりも、単に数学が楽しいからやるほうがステキじゃありませんか」という内容でした。このように、数学的話題だけでなく、数学の意味自体まで考えさせてくれるのは非常にすばらしい点です。

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