フリオ・フランコが語る超一流のメンタル術 野球、ドミニカ、そして、愛する日本について

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――野球選手として上達するために、どんな努力をしましたか?

つねに全力を尽くした。ひとつの場面が終わったら、すぐに次の局面へと思考回路を切り替える。それが全力を尽くすということだ。アウトに打ち取られたら、次の打席をすぐに考える。考えるから、次の行動に移ることができる。それが準備というものだ。

(撮影:龍フェルケル)

――あなたの考え方はすごく論理的です。野球選手にとってメンタルはどれくらい大事ですか?

俺は野球のメンタルゲームとしての要素を、ほかのヤツらと違うように考えている。人々はメンタルについて、難しいと考えがちだ。俺はそう思わない。人間は生まれながら、自然に意識を高める能力を授かっている。ありのままに意識を高められ、意図的に集中できるようになることが、試合で勝利する秘訣だ。勝者になりたいなら、雑音をブロックする方法を学ばなくてはならない。試合中に集中力を失うと、取り戻すのは難しい。野球もサッカーもバスケットボールも、人生だってメンタルゲームだ。今、自分が取り組んでいることに、とにかく集中しろ。スポーツは瞬間的だ。情熱を持ち、フィジカルもメンタルも集中するんだ。

酒なし、パーティーなし、タバコなし

――野球選手にメンタルが重要だということに、どうやって気づきましたか?

10代の頃にマイナーリーグと契約を結んだときは、パワーがあり、若く、健康だったから、フィジカルさえあれば十分だった。それから年を重ね、もっと自然になることを覚えた。それが集中するということだ。経験を積んで24、25歳と年を重ね、30歳になると余裕が出て、すべてを受け入れて集中できるようになる。フィジカル的にもメンタル的にも、仕事の進め方を理解してくる。肉体的に若いときは、メンタルを追求しなければならない。逆にメンタルが確立された年齢になれば、肉体を作ることが必要だ。

――それが49歳までプレーできた理由ですか?

それは多くの物のコンビネーションだ。俺は酒を飲まないし、パーティにも行かないし、たばこも吸わなかった。食べ物にも気をつけなければならない。

――多くの人にとって、パーティやアルコールは魅力的なものです。あなたにはそれほど野球が重要だったのですか?

女は魅力的だ。アルコールも人を引きつける。だが野球選手にとって、そういったものをモチベーションにはできない。悪いコンビネーションは、パーティ、女、アルコール。そんなことをしていたら、次の日に100%のパフォーマンスをすることはできない。夜中の3時までパーティで酒を飲んで、女を連れ帰って、朝起きたとする。朝飯を食べ、プロテインを取り、ジムに行っても、体は100%の状態ではない。運がよければ、それでも10年はプレーできるだろう。だが、その直後には引退が待っている。結局、何をどうやって組み合わせていくかが重要だ。それがバランスと言われるものだ。

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