貧困者を救済するには、何をするべきなのか 激論!鈴木大介×「失職女子」大和彩<後編>
鈴木:先日、脳梗塞で倒れる以前の取材音声を聞き直したのですが、僕はなんて暴力的な取材をしていたんだろうと猛烈に反省しました。本人が思い出せないエピソードや言語化できない思いを、先読みして引っぱり出してあげる……その場では彼らも「そうそう!」「言葉にできてスッキリした」と言ってくれますが、僕と別れた後、記憶を掘り返されたことでパニックを起こして苦しんだかもしれない、いろんな精神疾患が悪化したかもしれないんです。
大和:生活保護申請でも、そこに至る過程を話さなければいけない場面があります。それを負担に感じるあまり申請できない、という人も少なくないと思います。
実態や気持ちが伝わるアウトプット
鈴木:僕は、貧困を支援する人たちが個々の当事者からエピソードが聞き取れていないことを疑問に思っていたのですが、経緯のヒアリングは心理職の人が慎重にやるべきことで、支援の現場ではその人の現在と今後について一緒に考える、というすみ分けがあるそうです。生活保護申請の際も、心理分野に精通した人材が立ち会う、など制度自体の見直しが必要ですね。
――当サイトの連載で鈴木さんは一貫して「貧困のコンテンツ化」に警鐘を鳴らしている。しかし、「かわいそうな貧困者」をどこかから見つけ出してきて、ほんの数時間だけその過酷な人生に耳を傾ける、そんな記事がネットを中心に今日も量産されている。
大和:私は、自分が生活保護を申請する前、すでに受給している人、しかも女性が書いた本やブログを探していました……でも、なかった。貧困は悲惨だよ、という記事ではなく、そうした生活保護の実態やリアルな声を当事者が伝えてくれるものであれば、今でも読みたいです。
鈴木:自分たちの置かれた状況、心情、つらさを理解してもらうために本人が声を上げる、または上げさせるのは危険です。それによってその人の人生が途絶える可能性をはらんでいるから。けど、当事者自身がラクになるために発信すると考えると、どうでしょう。適切なサポートのもとに本人の心の負担を軽くしつつ、なおかつその実態や気持ちが曲げられることなく社会に伝わるアウトプット。そんな方法を僕は大和さんと一緒に考えていきたいです。
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