貧困を議論するより、「痛み」の緩和が先だ 激論!鈴木大介×「失職女子」大和彩<前編>
鈴木:レジでお客さんが待っているだけで、僕は間違いなくパニック障害が出てしまいますよ。
――疾患や障害がある両氏にとって、自分にできる仕事/できない仕事の見極めは重要である。
鈴木:自分が倒れる以前は、脳梗塞や高次脳機能障害に見舞われたら人生一発でアウトだと思っていました。障害や疾患を抱えながら働くビジョンが、まるでなかった。ルポライターである僕にとって、障害によってコミュニケーションが取りにくくなったことは致命的です。ただ、できる仕事が何もないかというと、そんなことはありません。時間をかければできることはたくさんある。
でも、世の中のほとんどの仕事はスピードがないとやっていけないのが現実です。いまの僕は何をするにも時間がかかります。高速道路3車線のど真ん中にいきなり立たされた歩行者のような状態。以前は自分もその道路を車でビュンビュン走っていたのに。かつての自分がいまの自分と同じ職場だったら、「使えないヤツ」と思うでしょうね。
仕事の前には面接というハードルがある
大和:私も具合が悪いときは、何もかもがスピードダウンしますが、同じく時間をかけてもよければ、自分なりにできる仕事はあると思います。でも、その仕事にたどり着くまでには、面接という高度なコミュニケーションが求められますよね。何かを聞かれたとき、臨機応変かつ素早く返答しなければいけません。
また、私には男性恐怖症があり、特にスーツ姿のビジネスマンが視界に入るだけで身動きができなくなります。自分の父や、仕事をクビになったときのことを思い出すからなのでしょうが、これがあることで面接はさらに大きな関門となってしまっています。
――そんな状態から一朝一夕で「使える」「働ける」にジャンプアップできるわけはない。まずはケガをした脳の回復、そしてそれには時間がかかる。自身に障害が残ったことで、働く以前に“生きること”そのものが困難な人たちの置かれている立場や気持ちを身をもって知ったことを、鈴木さんは著書で「僥倖」と表現した。では、八方塞がりなってしまった人たちに光明を届ける方法は見えているのか?
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