大学入試の「試験一発方式」はもう限界だ 物理的にもマッチング的にも課題だらけ
だからと言って、入試の時期を前倒しするわけにもいかない。なぜなら、実施日程が早すぎれば、準備が間に合わないので受験者に敬遠される。仮に受験したとしても、練習台に使われかねない。
過去、他大学の合格発表よりも前に入学金の納入締切を設定して、入学を確定させてしまおうという施策も多くの学校が行ってきた。しかし、これをやると、今度は、それまで保険としてでも受験してくれていた併願受験者が極端に減ってしまう。
また今後、少子化によって学生獲得競争がさらに厳しくなるなか、遠方の学校はますます不利な状況になる。入試が2月に集中する中で、特定の日に遠方に行くというのは敬遠されるのが自然だ。
こうした日程や距離的な問題の打開策としても有効とされているのが、AO・推薦入試、そして、新しい「人物重視・多面評価型」の入試への転換だ。
では、実際にはどのような転換が始まっているのか? 各大学の取り組みを見てみよう。
まったく新しいタイプの入試が登場
お茶の水女子大学は、平成28年度(平成29年度入試)から、現行のAO入試を大きくモデルチェンジした新型入試を用意している。その名も「新フンボルト入試」。ネーミングの謎はさておき「グローバル女性リーダーの育成」の理念を実現するために開発された入試だ。
受験生はまず、同大学の教授が開く「プレゼミナール」に参加し、授業レポートを書く。このプロセスが一次選考を兼ねている。興味深いことにプレゼミナールには、受験生だけでなく高校2年生や高校教員も参加できることになっている。
二次選考はさらにユニークだ。文系受験者には、出された課題を図書館でのリサーチで解決する「図書館入試」が、理系受験者には、実験を行った結果から何がわかるかを分析させる「実験室入試」が行われる。いずれも、図書館や実験室での振る舞いをじっくり審査されるのだ。実験室入試は丸一日、図書館入試に至っては2日間にわたって行われる。
大学側は、「本人が到達した結論だけでなく、その試行錯誤の過程をじっくり観察しながら、本人の有する総合的な学力や能力、資質、知的関心、意欲などを丁寧に評価したい」としている。
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