中国人風刺漫画家が日本に「亡命」した事情 習近平政権下で強まる言論への規制<4>

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習氏は口ひげを生やし右手を斜め上方に突き出してハイルヒトラー式の敬礼をしている。王さんが指さすのは、5列ずつ横に並んだ人で作られているように描かれているキャタピラーだ。それは、キャタピラーに踏まれペタンコになった人が張り付いているようにも見える。戦車の後方には赤く染まった走行跡と天安門が描かれている。そう、民主化学生運動を武力弾圧した天安門事件を連想させる漫画ではないか。

「この人たちは軍事パレードに参加した人たちであり犠牲者です。いつか国民を鎮圧するかもしれない」

習近平氏がハイルヒトラーのポーズで直立

同じ戦後70周年の式典を揶揄した別の漫画は、共産党の赤い旗が風に靡いて「中共(=中国共産党)反ファシスト勝利70周年」と書かれているはずの横断幕の「反」の文字を隠し「中共ファシスト勝利」と読めるようになっている。その横で、習氏がハイルヒトラーのポーズで直立している。習近平氏をヒトラー同様の独裁者と描き、共産党こそがファシズムと断じる。漫画の見どころを「面白いでしょう」といわんばかりに嬉しそうに説明してくれる王さんだが、その柔らかな雰囲気からは想像がつかないほど風刺は辛辣で強烈だ。

習近平氏を茶巾絞りのよう形に

習近平氏の”モデル”になった肉マン

ところで、これらの習近平氏はどれも頭のてっぺんシワが入り、顔全体がちょうど茶巾絞りのよう形になっている。

「最近は習近平を肉マンに似せて描いています。彼が北京で肉マンを食べたことがあり、それから周囲の人々がゴマをするようになりました。だから私は彼を肉マン皇帝と呼び始めたのです」

王さんが皮肉っているのは、2013年の年末、習氏が、北京にある肉マンのチェーン店「慶豊包子」を訪れたエピソードだ。中国のトップが警備もなく庶民の店に足を運ぶなどはあり得ない。当時、習氏は、贅沢禁止を謳い反腐敗キャンペーンに強権を振っていたが、これはその習氏本人は、質素で庶民的な指導者である、と印象付けるための国を上げての演出だ。

余談だが私もその肉マン店に行き、習氏が食べたとされる豚と白菜肉マンを食べてみた。大きさは中村屋の肉マンと比べると小ぶりで大き目のシューマイくらいだが、固めの生地はずっしりと腹にたまり餡も脂身たっぷりだ。一つ20円程度。値段も庶民的である。店には習氏が訪れた際のニュースの録画が流れ、来店時の写真を引き伸ばした大きなパネルも貼ってあった。地味な服の男たちとテーブルを囲んだ習氏が、真剣な面持ちで訓示を垂れているかのような写真で、どう見ても店の雰囲気に溶け込んでいるようには見えなかったが。

中国当局は何を恐れているのだろうか?

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