障害者殺傷事件、なぜ犠牲者は匿名なのか 障害者に対する日本の姿勢が問われている
「なぜ障害がある人だけが隠されるのか。犠牲者がどういう暮らし、どういう家族関係、どういう趣味を持っていたのか、そういう人としての存在があまり出てこない」
相模原の事件の植松聖(さとし)容疑者は、重度障害者の安楽死を支持し、大量殺人計画の概要を政治家に送った後、自身と周囲に危害を加える危険があると判断され、短い間、措置入院させられた。
障害者介護の現場で働く人のなかには、普通の日本人が植松容疑者の過激な考えに共感を抱いていると心配する人もいるが、専門家はそのような考えは主流ではないと語る。
日本では、安楽死も自殺ほう助も合法ではない。
患者の同意を得て延命治療を行わない医師を守る法律を成立させようとする動きは、それが安楽死を合法化する一歩となるのを恐れる障害者の権利擁護団体からの猛反対で頓挫している。
身体に障害のある人に対する差別等に関しては過去数十年で大きな進歩が見られると活動家は指摘するが、「やまゆり園」の入所者のように認知障害のある人はまだかなり差別に直面している。
地方に住む障害者は、もっと辛い
また、地方に住む障害者は都市に暮らす障害者よりも、社会に融合されるうえで大きなハードルにぶつかる。都市では、批判が高まっている大規模な孤立した施設ではなく、コミュニティーで集団生活を送ることができるグループホームで介護する傾向にある。
2020年の東京パラリンピックに向けた準備は、少なくとも東京のバリアフリー環境を向上させるきっかけを与えている。東京メトロは2019年3月までに、多目的エレベーターを全ての地下鉄駅に設置する。
相模原事件の犠牲者の匿名性をめぐる議論が現実に起きているという事実こそが、希望の持てる理由だと、前向きに捉える人もいる。
「これは非常につらい事件だったが、皆が真剣に考えるきっかけになるのはとても大事」だと、日本障害フォーラムの原田氏は語った。
(Kwiyeon Ha記者、Linda Sieg記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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