日銀の「総括検証」は何の意味も持たない なぜ黒田総裁はいつまでも間違い続けるのか

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日銀の大規模緩和策の根底には、物価は上昇するのが好ましく、下落するのは好ましくないという、これまで宗教のように信じられてきた経済学の常識があります。ですから、大規模緩和策を支持する経済学者やエコノミストのすべてが、円安が好ましいと考えていますし、円安による輸入物価の上昇が全体の物価上昇につながれば、デフレ脱却に成功するだろうといっているのです。

消費増税も円安も使えるおカネが減ることでは同じ

 たとえば、価格に敏感な主婦層がいつも買っている食材や日用品などが、円安によって値上がりしたとします。値上がりの理由が、消費税の増税のせいなら好ましくないが、円安のせいなら好ましいというのは、本当に正しい考え方でしょうか。消費者の立場からすれば、そんな道理が通じるはずがありません。物価の上昇により、懐が寒くなったと実感した消費者は、なるべく消費を抑えるようにするのが自然な行動パターンなのではないでしょうか。

円安による輸入インフレが進むにつれて、家計の可処分所得が減っていくのは避けられない運命です。その結果、2013~2015年の間に円安があまりに進んでしまったために、実質賃金が3年間累計で4.6ポイントも下がってしまいました。すなわち、この間の実質賃金の下落率は、リーマンショック前後の期間に匹敵していたのです。これでは、GDPの6割を占める個人消費が歴史的な低迷に陥ってしまうのは当然のことでしょう。

1990年代に日本のバブルが崩壊して以降、個人消費がマイナスになったのは、金融システム危機で貸し渋りや貸し剥がしが起きた1998年、リーマンショック期の2008~2009年、そして実質賃金が大幅に下落した2014~2015年の合計5年間です。

ここで深刻に受け止めなければならないのは、個人消費が2年連続でマイナスになったのは、2008~2009年と2014~2015年の2回しかないということ、さらには個人消費が2008年に0.9%減、2009年に0.7%減だったのに対して、2014年は0.9%減、2015年は1.3%減と、戦後最悪の減少率を更新してしまったということです。

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