実際のところ、GDPの推移を見てみても、リーマンショック期を除けば、2013~2015年の成長率は年平均で0.6%と、歴史的に低迷していたことがわかります。
このような現状を見れば、大手メディアの世論調査で押しなべて「8割が景気回復を実感していない」という結果が出るのは、当然のことだといえるでしょう。それにもかかわらず、日銀や政府が「景気の回復は続いている」という見解を示し続けるのは、あまりにも事実を歪めているといわざるをえません。
黒田総裁はインフレやデフレの捉え方を間違っている
ただし、2016年は一転して円高に傾いているので、実質賃金は間違いなく上がることになりますし(『円安に頼る経済政策を終わりにする時が来た』(2016年6月25日の記事)参照)、それに伴い個人消費も幾分ながら増加に転じることが期待できます。
そこで懸念すべきは、日銀や政府が「大規模緩和策の成果で、実質賃金が上がり始めた」と支離滅裂なことを言い始めることです。黒田総裁はまったく当たらないIMFの経済予測を信じて金融政策を決定しているのかもしれませんが、国民は日銀の見解を決して信じてはいけないのです(『なぜ国際機関の経済予測は当たらないのか』(2016年9月16日の記事)参照)。
黒田総裁はインフレやデフレの捉え方を完全に間違っています。インフレやデフレは経済現象の「結果」にすぎず、決して「原因」にはなりえないのです。好況の「結果」としてインフレやデフレになることがあれば、不況の「結果」としてインフレやデフレになることもあるのです。
日銀の金融政策の「デフレを脱却する」という目標そのものが、最初から「原因」と「結果」を取り違えて金融政策を決定しているので、その点を正さない限りは、今回の「総括検証」は何の意味も持っていないといえるでしょう。
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