意外と知らない「家庭内離婚」の法的落とし穴 婚姻関係の「破綻」とみなされる要件は?

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が、家事をするのは義務だと考えているため、「キッチリしている」とのこと。そのため、妻が「家庭内離婚」したつもりでいるのに、夫は全く気づかず、ただの喧嘩が続いているだけと思っているようです。

この女性のケースに限らず、愛情はなくなっていても、経済的な理由や子どものことを考えて、離婚せずにいる夫婦は珍しくありません。そんな状況をさして「家庭内離婚」「家庭内別居」「仮面夫婦」ともいいますが、このような夫婦は法的には「夫婦」として認められるのでしょうか。

通常、夫婦には、配偶者以外と肉体関係を持ってはいけないという貞操義務などのルールがありますが、仮面夫婦の場合はどうなっているのでしょうか。もし、後で本当に離婚したいと思った場合にはどう影響するのでしょうか。能登豊和弁護士に聞きました(以下、能登弁護士)。

「別の住居での生活」は必須要件ではないが

離婚原因として「婚姻関係の破綻があった」といえるのは、夫婦関係が破綻・形骸化したといえる程度の相当期間、別居が継続するか、これと同じようにみなせる程度の状況に達した場合などに限られています。

その場合の別居は、お互いが別の住居で生活することは必須ではありません。しかし、別の住居で生活しているのと変わらないくらいに夫婦の接点が減少し、しかもその期間が長期にわたる必要があります。

相談のケースでは、家事などを通じて、夫婦間の接点が少なからず存在していますから、別の住居で生活している場合と変わらないくらいに夫婦の接点が減少しているとはいえないようです。また、期間も、それほど長く続いているわけではないようですので、婚姻関係が破綻していると認められる可能性は低いと考えられます。

なお、夫の発言に関しては、投稿者が嫌がっているにも関わらず、何度も同じような発言が繰り返され、そのために夫婦の関係が改善不能なほどに悪化した場合であれば、婚姻関係が破綻したと認められる余地があります。

しかし、相談のケースでは、投稿者が嫌がっているのに繰り返し発言が行われたわけではなく、また、夫婦関係が改善不能なほどに悪化したとも言い切れません。

したがって、今回の場合は「婚姻関係が破綻している」とは言えないでしょう。

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