観光大国フランスの“巧妙な集客術” 旅行者数は日本の10倍、なお拡大に“執着”

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(「クロ・リュセ城」のフローレン・デュブルイル氏〈左〉とガエル・イブラムサ氏〈右〉)

日本人のフランス旅行者は2012年には前年比5%増と復調し、全体の伸び(同4.3%増)を上回った。フランス国内の大手デパートにおける外国人観光客の支出額でも、2位に返り咲いた(1位は中国)。

見本市のブースをのぞくと、日本語パンフレットを常備する出展者が多い。たとえば、レオナルド・ダ・ビンチが晩年を過ごしたクロ・リュセ城は、周辺敷地と合わせて、「レオナルド・ダ・ヴィンチパーク」として彼の芸術感に触れられるテーマパークとなっている。

中国からの観光客の買いまくりぶりには及ばないとはいえ、経済的な成熟度では先を行く日本。観光客も、よりディテールを好む傾向があるという。「あまり世界に知られていない場所への観光や、新しい体験を好むのが日本人。土産物への支出よりも、三つ星レストランでの食事や、工房でのワークショップへの関心が高い」(アトゥー・フランスのマーケティングディレクター、ソフィー・ラクレソニエール氏)。

人気のノルマンディーではホテルを日本人向けに改装も

重点地域のひとつ、ノルマンディーは、洋上に浮かぶ古城のような修道院モン・サン・ミッシェル(ユネスコ世界遺産)が有名。パリから200キロメートル圏内で日帰りツアーも可能なため、日本人観光客に人気のエリアだ。

今年は3年ぶり2回目の「印象派フェスティバル」が開催されることもあり、「印象派好きの日本人集客には特に力を入れている」と、ノルマンディー地方観光局の副マーケティングマネジャー、エドゥアール・ヴァレール氏(写真)は話す。

フランスのホテルは通常、部屋ごとにデザインを変えたり個性を出すため、広さがまちまちだったりするが、「日本人ツアー客は仲間と同じ広さ、デザインの部屋を好む」(ヴァレール氏)。そこで、統一した様式のホテルへ改装した例もあるという。

もうひとつの重点地域、ミディ・ピレネーとどう差別化するかと問い掛けたところ、「競合はしていない。フランスはどの地域にも独自の魅力がある。長期滞在の余裕があるなら、ミディ・ピレネーをじっくり回るとよいだろう。ただ時間がなければ、パリから近いノルマンディーはオススメだ」(ヴァレール氏)と説明した。

「2009年革命」が観光政策を進化させた

アトゥー・フランスは、観光PR機関だったメゾン・ド・ラ・フランスと、観光開発・技術供与・観測機関のODITフランスが統合して、2009年に創設された経済利益団体(GIE)。アトゥーはフランス語で「切り札」を意味し、国家レベルの観光戦略を一手に担う。傘下には国、地方自治体、観光業者やフランスの経済セクターからなる1300の会員が連携している。

次ページ観光で生まれた雇用は海外に逃げない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事