「歯を失ったあの人」に教えたい治療の現実 入れ歯、インプラント…その利点と欠点

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インプラントは、失った歯の代わりにチタンでできた人工の根っこを入れて、歯の機能を回復していく治療法です。新しい治療に思われがちですが、実はインプラント治療自体は50年の歴史があり、現在は世界各地で行われ、成功率も95%以上。多くの人が体験している治療です。

インプラントにはどのようなメリットがあるのでしょうか。歯を失った後、奥歯に入れ歯を入れても、もともとの噛む力に比べると約20~30%しか回復できません。一方、インプラントならもともとあった歯のように顎の骨に固定されているために、硬いものでも、くっつきやすいものでも噛めます。

失った歯の部分をブリッジで治すためには、隣り合う歯を削る必要があります。ただ、健康な歯を削れば、その寿命を短くすることにもなります。インプラントなら、隣り合う歯を削らずシンプルに治療できます。口の中の違和感がほとんどないのもインプラントの特徴です。通常、髪の毛一本でも口の中に入れば相当な違和感があるように、金属でできた薄い入れ歯などでも、多少の違和感は否めませんが、インプラントならば、もともとの歯とほとんど変わらない形に回復できるので、違和感はほとんどないといっていいでしょう。

ブリッジでは、失った歯にかかっていた力の負担を土台になる両サイドの歯で補います。それまでよりは、かかる力の負担が大きくなるため土台となる歯の寿命も短くなってしまいますが、インプラントでは、もともとの歯にかかっていた負担を戻せます。

インプラントは歯の根の代わりに人工歯根を使っているだけで、被せ物にセラミックを使えば歯と同じようにすることができます。奥歯の場合は機能面や噛む力によって被せ物や構造を変えることがありますが、前歯はインプラントとは気づかれないようにきれいに治療できます。

インプラントのデメリット

このようにインプラントにはさまざまなメリットがありますが、デメリットも忘れてはなりません。ひとつは治療期間が長いことです。最近ではインプラントも進化し、かなり治療期間も短くなりましたが、それでも短くて2~3カ月、長い場合で6カ月ほどを要します。

また、インプラント治療は、歯を支えているあごの骨に人工の根っこを入れる処置なので、歯茎を開く必要があります。その他症例によっては他にも外科的な処置が必要になってくることもあります。骨粗鬆症や重い糖尿病の患者など、あごの骨に問題がある場合はインプラントができないこともあります。また、極端にあごの骨が痩せている場合などは、人工の骨などを使って、骨を作る処置などが必要になるケースもあります。

さらには先天的な病気などによって歯がないごく一部の場合を除き、インプラント治療を保険診療で行うことはできません。自費診療となるため、平均すると1本35万~40万円ほどの費用が必要になります。

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