黒田緩和が開けてしまった「パンドラの箱」 市場動向を読む(債券・金利)
もちろん、これまでも、大手の債券投資家が国債を一斉に市場で売却しようとすれば、流通市場にそれを吸収するだけの十分なキャパシティはなかったであろう。しかし、「財務省の国債管理政策」、「日銀の市場機能保持への配慮」、「国債を保有しやすい金融規制」など、様々な要素が複合的に生み出す「微妙な均衡」が日本国債の市場では成立しており、それが、債券投資家に大量の国債の保有を促してきた一つの理由でもあった。
今回の政策決定は、その「微妙な均衡」を崩してしまった可能性がある。たとえ日銀が発行量の7割を吸収しても、その背後には1000兆円の巨額な政府債務ストックがあり、その大半を国内債券投資家が保有しているのである。閉じていた「パンドラの箱」の蓋がほんの少し開けられ、中の光が漏れ出てくる状況が生まれてしまったのではないか。
2年で2%の非現実的な目標が流動性の低下を助長
上記(2)の点も、今回引き起こされた国債市場の「流動性」の低下を助長する要素の一つかもしれない。というのは、「2年でCPI(消費者物価)上昇率2%の物価安定目標を達成する」という非現実的な目標を掲げてしまったがゆえに、日銀が国債購入政策を継続する時間軸が、日本国債の市場においては極めて長く認識されてしまったのである。
元々2%程度だったインフレ率をそのまま2%水準にとどめておくことを目的にして行われた米国や英国のQE(量的緩和)とは、その点で本質的な相違がある。米国や英国のQEも中央銀行が大量の国債を市場から購入することには変らないが、どの程度の量をどの程度の期間購入し続けるのかという市場の期待は、経済ファンダメンタルズの違いによって、左右されうる。
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