黒田緩和が開けてしまった「パンドラの箱」 市場動向を読む(債券・金利)
その考え方に基けば、今回採られた日銀の金融緩和によって日本国債の市場が「全面的な日銀依存」の構造を強めていったとしても、その事だけをもって「財政ファイナンス」であるとまでは言えない。
とはいえ、そのような究極の姿が具現化した場合、1000兆円の政府債務を全額日銀が保有し、膨れ上がった日銀のバランスシートの負債側に民間金融機関の膨大な超過準備保有が存在するという極めて異常な金融構造が出現することになる。
為替市場の急落がインフレーションを招く未来像
その時点で起こっている状況は、「政府の財政拡張」に対する市場の懸念や感応度が極端に過敏になっている状況であろう。GDP比でわずか0.1%の財政赤字の変動であっても、市場は今とは比較にならない大きな反応を示すことになるだろう。しかも、それはすでに実質的に存在しなくなった日本国債市場ではなく、為替など他市場において、その反応が全て示されることになるだろう。為替市場の急落が結果的にインフレーションを招く可能性は、現在よりも遥かに高まっているはずである。
これは、現時点においては一つの空想的なシナリオである。しかし、中央銀行の政府債務に対する関わり方は、そういった空想、連想を市場にもたらし得るという一点において、極めて慎重に取り扱われるべきものである。今回の日銀の措置は、どうやらその点についてあまりにも配慮に欠けたものであったようだ。
今後、日銀は市場安定化を図り、投資家のパニックも鎮まって、 「パンドラの箱」の蓋は、短期的には一回は閉じられることにはなるのかもしれない。しかし、一度「パンドラの箱」の中から漏れ出した光は、日本国債市場の参加者の眼には今後も焼きついて離れることはないであろう。一回は閉じられたとしても、二回目に蓋の隙間が開いた時には、もはやその光を封じ込めることは難しくなるのかもしれない。
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