企業が大学の成績を参考にするようになると、大学生は勉強して少しでも成績を上げようとします――これが正のスパイラルです。正のスパイラルが回り始めれば、大学生は晴れて勉強するようになるのです。
これを、絵空事だと思いますか? しかし、アメリカをはじめ海外では、当たり前のことです。日本だけが実現できない理由など、どこにもありません。
大学生・大学から手をつけてもうまくいかない
正のスパイラルを回せばいいということは、ご理解いただけたかと思います。では、負のスパイラルを正のスパイラルに変えるためには、どこから手をつければいいのか、考えてみましょう。
まず、学生に「もっと勉強しろ」というメッセージを送る、というのはどうでしょうか? これでうまくいけばたいへん美しいのですが、残念ながら期待薄と言わざるをえません。ご自分に当てはめればわかっていただけると思いますが、私も含め多くの人間は、楽しくもなく、何の得もない行動を続けられるようにはできていません。メッセージを送っただけでうまくいくと考えるのは、牧歌的にすぎます。
では、大学の先生を変えるのはどうでしょうか? 大学の先生を評価し、きちんと指導・評価していない先生をクビにする。あるいは単位認定を厳しくし、きちんと勉強しない大学生は卒業できないようにする。このような改革は、たしかに一定の効果をもたらしそうに思えます。ですが、私にはあまりうまいやり方だとは思えません。
その理由は、規制強化による改革には、多くの抜け穴があることです。たとえば大学の先生を評価するとなった場合、その評価基準をどう決めるのでしょうか? 学生へのアンケートで決めればよさそうですが、残念ながら現時点の学生は「楽に単位をくれる」先生を評価し、厳しい先生に悪い点をつけるでしょう。
また、単位認定を厳しくするという方法にも、学生をどういった基準で評価するのかという問題があります。たとえば、膨大な量の暗記をしないと単位が取れないようにすれば、たしかに卒業は難しくなります。ですが、ただひたすら暗記をしてきた大学生を欲しがる企業はありません。評価基準が企業の求めるものと違ってしまっては、正のスパイラルを回す第一歩にはなりえないのです。
企業を手始めに、大学を変えよう
そうなると、企業から変えていくしかありません。
連載第2回で、企業が大学の成績を採用の参考にできないのは大学の成績が信頼できないからだ、とお伝えしました。ということは、大学の成績の信頼感を取り戻せば、企業は成績を参考にできるということです。
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